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子会社の特別清算について

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ご相談
【赤字続きの子会社の整理を行いたいのですが、何か良い方法はないでしょうか。】

多角的な経営を行っておられる会社あれば、すべての事業が上手くいくことはなかなかありません。
本業に関連して別に立ち上げた会社の経営がどうしても上手くいかないような場合には、整理をする必要が出てきます。

一般的に、赤字の会社を整理する手続としては、破産手続が考えられます。
しかし、破産手続を申し立てると、「破産」という言葉がネガティブなイメージを持つことから社会的にインパクトが大きく、親会社の信用まで失われかねませんし、時間も相当程度かかります。
加えて、破産手続の場合には、管財人という第三者が財産の処分権限を持ってしまうため、どのような残余財産の処理がなされるのか、予測できない部分もあります。場合によっては、破産前の弁済などが否認され、受け取った金銭の返還を求められるようなこともあり得ます。

このようなデメリットやリスクに応える方法として、特別清算手続をご紹介します。
いつでも、どのような会社でも使える手続ではありませんが、親会社などがあって、子会社の赤字のほとんどを親会社が担っているような場合や、大口の債権者が手続に協力してくれるような場合には、特別清算手続が有用です。
特別清算の手続きは、破産手続に比べてスピーディであり、破産管財人のような第三者が処分権限を持つようなことはなく、「破産」という社会的にネガティブな言葉も出ません。
さらに、裁判所へ納める費用も破産より安価で、特別清算手続きを行った会社に対する債権は、債権を放棄しても損金として処理できますので、税務的なメリットもあります。

<特別清算手続の概要>
①株主総会で過半数株主の出席及び出席株主の3分の2以上の賛成をもって、解散の特別決議が必要です。
(このため、特別清算は、親会社が100%株式を保有しているような、反対意見が出ないか、出ても多数派として可決できる場合に使われます。)
②その後、裁判所に対して特別清算開始の申立てを行います。
③特別清算手続きを行う場合、その会社は債権債務が存在しない状態となる必要があるため、②と平行して債権者と協議を行い、債権債務関係をどのように解消するのかを決めていきます。
(債権のほとんどを親会社が買い取るなどすることで、できる限り債権債務関係を単純化しておくことが重要になります。)
④事前にできる限り整理をしておけば、特別清算は、手続開始から終結まで、早ければ2ヶ月程度で終わらせることが可能です。

<手続の注意点>
一番大きな点としては、親会社が債権を買い取るなどすることが多いため、親会社にはある程度の資金負担が必要になります。
(このため、親会社が黒字で、子会社が赤字の場合に最も適した手続となります。)

この手続を行う場合、各債権者との調整や事業停止の時期、申立書の作成、株主総会の手続など、事前の準備が必要になりますので、専門家にご依頼いただいた方がいいかと思います。
弁護士に依頼する場合でも、一般的にではありますが、破産手続を選択するよりも安価で、かつ短期間で終わることが多いのも、この手続のメリットとなります。

使う機会は限られますが、ぴったり当てはまる場合には大変有用な手続ですので、経営に関与される方は、選択肢の一つとして持っておいていただけるといいと思います。

当法人でもお受けできる手続ですので、特別清算についてお考えであれば、いつでもご相談下さい。

執筆者情報

黒岩 英一

弁護士法人ALAW&GOODLOOP

会計事務所向け法律顧問
会計事務所向けセミナー

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2017.07.14 09:27:32