申し訳ございません、おかけになった「不正」へは現在おつなぎすることができません。パート1(その3 全4回)
この記事は許諾を得て、「贈収賄事例集:テーブルの下からの眺め “Bribery and Corruption Casebook: The View from Under the Table” 」Laura Hymes, CFE, and Dr. Joseph T. Wells, CFE, CPA編、John Wiley & Sons Inc.社、2012年より引用したものである。この事例における人名と組織名は変更した。
ダンの最初の業務はプロジェクトの予算を計算することであった。彼はあまり苦労せずに数時間で計算した。おかしなことに、HALがプロジェクトの作業の99%を実施することになるにもかかわらず、この予算はコンサルタントへの多額の費用が除外されていた。しかし、誰もダンの見積もりや計算について質問せず、予算はすぐに承認された。
ダンはオスロでの自分の認知度を高める機会を大切にしていたものの、心配だった。「よし、今、うまくやらなきゃいけない、予算内で時間通りに。そして、チェットが手柄を独り占めしないようにしないと」。チェットが3か月前にダンの昇給と昇格を推薦するのを断ったことに、ダンはまだ腹を立てていた。「また、執行役員の給与で上級執行役員の仕事をすることになるな」と。
例のごとく、チェットは一度ダンを任命した後は、プロジェクトに背を向けていた。彼はダンにほとんど何の情報も求めず、プロジェクトの他の誰とも話さなかった。ブルッゲリとノックレコートが進捗を尋ねた時でさえ、チェットはダンにプレゼンテーションをさせたが、ダンがパワーポイントのスライドを苦労して発表している間、チェットはただ座ってブラックベリーをいじっていた。
NyTellはHALにターンキーソリューション(訳注:納品後、直ちに稼働できる状態にある情報システム)を提供するよう契約していた。これは、HALがプロジェクトの専門的なサービスのほとんどすべてを提供することを意味した。HALが提供しない専門的なサービスを他の2,3の業者が提供することになっていた、というのも機器やアプリケーションの中には、HALの技術者が分からない特許を持つソフトウェアがあったからだ。
ダンはジェイクをプロジェクトに入れる必要があった。新しいネットワークの主任設計者であるHALのエンタープライズ・アーキテクトと議論した後、ダンはその機会を見つけた。意見の相違点を大げさに言って、ダンはチェットに、このアーキテクトを外さなければ、このプロジェクトは失敗するということを納得させた。HALがそのアーキテクトの代わりに「途中交代のつまらない人材」を任命する可能性があるので、とダンが説明したためNyTellは外部の人材が必要になった。さらにダンのとびっきりの営業術のおかげでチェットはまたもあまり多くの質問をすることなくジェイク・マーシャルとの契約を承認した。ジェイクはプロジェクトのコンサルタントになり、ダンは彼を監督することとなった。HALは新しいエンタープライズ・アーキテクトとしてジェイクに対応しなければならなくなった。
どのような仕組みだったか(How it’s supposed to work)
NyTellの委託業者としてジェイクはサービスの支払いを受けるために請求書を送付することになった。NyTellは4つの事業部門当ての請求書を処理するための一元化された管理システムを使用していた。各業者は、メールが開封され、請求書が受領された時間が記録されるメール・ドロップボックスに請求書を送信していた。その後、請求書は電子的にスキャンされ自動化された買掛金システムであるBOONISにアップロードされた。
BOONISは請求書を社内のコストセンター、プロジェクトや部門ごとに割り振られた帳簿上の会計番号を割り振り、費用は適切な勘定につけられる。請求書はその後電子的にコストセンターの責任者のチェックに回される。クロエ・ポルテラ(Chloe Portela)はDCCプロジェクトの経理担当責任者であり、そのためBOONISは彼女をプロジェクトのコストセンター責任者としていた。
NyTellは、クロエに管理職としての権限があるため、彼女に5000ドルまでの支出の承認権限を与えていた。5000ドルを超えるが2万5000ドルまでの支出はチェットによる承認を必要とした。2万5000ドルを超える支出にはCFOのノックレコートの承認も必要とした。
BOONISで承認されると、コストセンターは費用を計上し、それに従って予算から差し引かれた。NyTellの買掛金部門は、ニュージャージーのリビングストンにある本社から直接小切手を郵送していた。
(パート1 その4に続く)
----------------------------------------
初出:FRAUDマガジン43号(2015年4月1日発行)