HOME コラム一覧 包括契約における不正(Fraud in umbrella contracts)その3 (全4回)

包括契約における不正(Fraud in umbrella contracts)その3 (全4回)

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ケーススタディーが示す見落とされた重大な利益相反

匿名の内部情報が調査開始の端緒に(Anonymous tip-off begins investigation)

 では、大きな会社であり、調達活動を行う支社を持っていた(名称やいくつかの詳細については変更を加えてある)クオテロン社のケースに戻ろう。ある人物が内部調査部門に対してクオテロン社の支社と包括契約業者ドンレインサプライ間の腐敗行為を指摘する匿名の内部通報を行った。

背景事情(Background)

 クオテロン社がドンレイン社からハードウェアの調達を開始したのは8年前で(ケンが調達部門で業務を開始した直後であった)、直近5年で年間約75,000ドルに達していた。個々の取引は、頻繁に行われていたが、額自体は小さかった。そのため調達部門の管理者にとって、国産のハードウェアの供給についてクオテロン社が包括契約を結ぶというケンの提案は受け入れ易かったのだ。その管理者は、ケンの提案通り同僚であるジュディ(Judy)に入札募集を行うよう指示した。ジュディは、(ドンレインサプライズを含む)4社に直接連絡を取り、包括契約のための入札募集を行った。
 ジュディは、調達管理者と財務マネージャーの審査を受けるため入札を行った。ドンレイン社は、全体的に最も安価な供給業者と考えられ、結局、クオテロン社は、ドンレイン社に対して12ヵ月の包括契約締結を認め、クオテロン社の調達する全てのハードウェアを供給する業者となったのである。調達部門の管理者はその後さらに2年契約を延長した。同社の経営者はこれを良いと感じ、契約の柔軟性をむしろ喜ばしいものと考えていた。しかし、経営者はその後調査チームが発見した追加の情報については認識していなかったのである。

調査(The investigation)

 ケンの上司は、ケンがドンレインサプライを所有していたことを知らなかった。ドンレイン社は、ケンがクオテロン社の調達部門で業務を開始した直後から取引を開始し、直近5年間には75,000ドルの年間取引量にまでなった。調査担当者は、公開されている企業情報をケンの個人情報と照合し、ケンの妻がドンレイン社の単独代表者、義理の息子が経営者かつ会社の顔ともいうべき役割を持っており、これによってケンの名前が表に出てくることがなかったことを突き止めた。
 調査担当者が、調達ファイル、内部連絡、調達部門の従業員への事情聴取を精査した結果、包括契約が締結される前にケンがハードウェアに関する調達を自ら実行できることが時々あることが分かった。しかしながら、ケンはいつもできたわけではない。会社は、調達申請を調達部門のスタッフ間で持ち回りにしていたからである。そのため、ケンは、他の者がいつドンレイン社の供給するハードウェアの調達申請を取り扱っているのかについて常に目を光らせていた。ケンは、それが分かるとドンレイン社を使うよう勧めたのだ。こうしたやり方は、会社が単一の供給業者に見積を求める低価格の調達においてのみ機能する。ケンは、調達部門内部において最も高い立場にあったわけではないが、ケンの在職期間や押しの強い人柄が、他の従業員をしてケンの反感を買わないようにさせ、それによってケンは殆どのハードウェアの調達をドンレイン社から行わせることに成功したのである。
 ケンは、オフィスの雑務担当者とも良好な関係をもち、分割して調達申請を出すよう指示していた。それによって、調達部門の人間が少なくとも3つの異なる供給業者による競争入札を義務づけられている財務上の(承認)基準額を下回るように仕向けたのだ。しかしながら、クオテロン社のビジネスは時が経つにつれて拡大し、調達量も拡大していった。それによって、ケンがオーダーの経過を追うことが次第に困難になり、クオテロン社は時として他の供給業者から調達するようになっていた。ドンレイン社が唯一の供給業者で有り続けるために、ケンは、クオテロン社の国内の物品調達についてドンレイン社と包括的契約を締結すれば、クオテロン社は時間とお金を節約できると主張した。これに対し、調達部門の管理者は、自身の業務上の負荷を減らす良い機会にもなると考え、即座に了解し、ジュディに手続を開始するように指示した。ケンはジュディを説得し、ケンにこの課題についてジュディに助言させてもらうようにした。彼らは、クオテロン社が定期的に必要とするアイテムのリストを書き上げ、ドンレイン社を含む4社のハードウェア共有業者を選定し、包括契約のための競争入札に参加するよう申し入れたのである。
 個々の供給業者は、クオテロン社に入札価格を提示したが、ドンレイン社が最後だった。ジュディは、入札情報を収集し、入札期限まで保存していた。ジュディは、彼女の上司の前で入札情報を開いたがジュディは直ちに入札封筒に廃棄した。入札文書を分析したところ、ケンは、巧妙に調達必要条件に影響力を行使し、クオテロン社が滅多にオーダーすることのないような高価な物が過度に重要視されるように仕向けられていることが分かった。ドンレイン社の入札は、概して最安値であったが、クオテロン社が定期的に発注する商品の価格は高かった。入札の評価者はこの点を見過ごしていた。クオテロン社はドンレイン社に包括契約を許していたが、誰もドンレイン社の実態調査を行っていなかった。調達部門の管理者は、ドンレイン社は既に長期に渡る供給業者であると言い訳をした。クオテロン社は既に自動車修理や配管や電気関係のサービスといった他のサービスに関する少数の包括契約を既に結んでいたが、物品については初めてであった。
 最初の12箇月が経過した後、調達部門の責任者はさらに2年間の契約延長を承認した。しかし、必要とされた実績の審査を行わず、ドンレイン社について苦情を受けたことがないことを唯一の根拠として調達部門の管理者は契約延長を正当化してしまったのだった。

(その4に続く)
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初出 FRAUDマガジン日本語版42号

執筆者情報

Paul Catchick, CFE

機構(OSCE)の内部調査官である。
翻訳協力:神谷 泰樹 CFE, CRMA, 認定コンプライアンスオフィサー

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2017.06.19 13:33:29