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包括契約における不正(Fraud in umbrella contracts)その1 (全4回)

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クオテロン社(Quoteron Inc.)の経営者は、調達担当幹部の一人であるケン(Ken)の勧めに応じ、ハードウェアの供給業者ドンレインサプライ(Donlane Supplies)に「包括契約」を与えれば、効率的だろうと考えていた。しかし、ケンはドンレイン社を所有していたことを会社に隠し、違法な独占取引によって不正に利益を得ていたのである。本稿では、調達プロセスにおいてどのように不正を探知し、阻止したらよいかについて述べることにしたい。

クオテロン社の調達担当幹部であるケンは、利益相反取引を行っていた。ケンは、会社に内緒でドンレインサプライという会社を所有していたが、同社はケンの雇用主にハードウェアを販売していたのだ。ケンは、クオテロン社を説得し通常の調達プロセスを回避し、ドンレイン社と独占契約を締結させた。クオテロン社は、一貫して良いやり方だと考え、この反競争的なやり方を続けてしまった!会社がこのように考えたのは、内部監査人達がクオテロン社に対し、不正を低減しつつ業務効率を高めるために包括契約を多く結ぶよう勧めていたからである。包括契約は、適切に実施されれば利益をもたらすが、そのもたらす結果について無頓着なまま利用すると、むしろ積極的に不正行為を促進してしまうのだ。これは、企業がしばしば見過ごしてしまいがちな点である。

包括契約の利点(Benefits of umbrella contracts)

包括契約(圧倒的に欧州での言い方であるが)とは、包括合意や枠組み合意としても知られ、商品の価格、数量、引渡条件と言った供給業者との将来の取引条件を規定した包括的な契約を言う。包括契約は典型的には特定の商品や役務について反復継続的な必要性が存在する場合に利用される。企業がこうした包括契約を適切に運用すれば、調達業者は既に承認プロセスを通っているので、調達不正を最小限にすることができる。しかし、包括契約を下手に運用すると正反対の効果が生じる可能性もある。
確かに、包括合意は、調達業者、供給業者の双方にとって魅力的かもしれない。購入側にとって有利な点としては、以下の点がある。
・調達部門が個々の調達について相見積や競争入札をする必要がなくなる。
・事務的な障害が少なければ少ないほど、請求から引き渡しまでの時間を節約できることを意味する。
・予め合意された条件によってサプライチェーンの確実性や安全性を高めることができ、これによって経営者が計画を立て易くなる。
・長期に渡る供給業者として選定される見込みによって、供給業者により安い価格を提示するよう働きかけることができる。
・包括契約はいかなる場合においても調達側が特定の取引業者から購入することについて拘束力を持つわけではないので、柔軟性も確保できる。

この最後のポイントは重要である。包括契約は、指定された業者を使用する義務を発じさせるべきものではないということだ。購入者は、いくらでも契約を結んで良い。それによって、購入者は数ある供給業者の中から選択することができるのだ。個々の調達活動のために購入者がどの業者も選定できるように選択肢が用意されているべきである。包括契約は、ビジネスを促進するものであって、ビジネスを支配するものではないからである。こうした利点が包括合意を形成する健全な理由である。しかしながら、企業が特定の供給業者と包括契約を結ぶ際には注意が必要である。それは、単一の供給業者に過度に依存することによって不正の危険にさらされることになるためである。実際、不正の危険は、調達プロセス一般におけるこれらの利点と同時に存在するものなのである。

(その2に続く)
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初出 FRAUDマガジン日本語版42号



執筆者情報

Paul Catchick, CFE

政府間不正、汚職分野の博士号を持ち、オーストリア・ウィーンに本拠地を置く欧州安全保障協力機構(OSCE)の内部調査官である。
翻訳協力:神谷 泰樹 CFE, CRMA, 認定コンプライアンスオフィサー

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クオテロン社(Quoteron Inc.)の経営者は、調達担当幹部の一人であるケン(Ken)の勧めに応じ、ハードウェアの供給業者ドンレインサプライ(Donlane Supplies)に「包括契約」を与えれば、効率的だろうと考えていた。しかし、ケンはドンレイン社を所有していたことを会社に隠し、違法な独占取引によって不正に利益を得ていたのである。本稿では、調達プロセスにおいてどのように不正を探知し、阻止したらよいかについて述べることにしたい。クオテロン社の調達担当幹部であるケンは、利益相反取引を行っていた。ケンは、会社に内緒でドンレインサプライという会社を所有していたが、同社はケンの雇用主にハードウェアを販売していたのだ。ケンは、クオテロン社を説得し通常の調達プロセスを回避し、ドンレイン社と独占契約を締結させた。クオテロン社は、一貫して良いやり方だと考え、この反競争的なやり方を続けてしまった!会社がこのように考えたのは、内部監査人達がクオテロン社に対し、不正を低減しつつ業務効率を高めるために包括契約を多く結ぶよう勧めていたからである。包括契約は、適切に実施されれば利益をもたらすが、そのもたらす結果について無頓着なまま利用すると、むしろ積極的に不正行為を促進してしまうのだ。これは、企業がしばしば見過ごしてしまいがちな点である。
2017.06.13 15:41:53