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原処分庁側の減価償却資産の償却限度額の計算は違法と判示

 いわゆる特例民法法人から一般財団法人へと移行した法人の減価償却額の計上の誤りを理由とする更正の請求を巡って償却限度額の計算方法の解釈が争われた事件で東京地裁(鎌野真敬裁判長)は、償却限度額の計算に際し、原処分庁側が取得価額とは決算整理を経た後の移行日時点の会計上の帳簿価額を意味するという解釈を前提に、各減価償却資産の償却限度額を計算したことには違法があると判示して、原処分を取り消す判決を言い渡した。

 この事件は寺院の伝承の文化等を興隆する事業を行い、広く国民の教化善導を図ること等を目的とする一般財団法人が法人税等の確定申告後、減価償却額の計上の誤りを理由とする更正の請求をしたところ、更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けたため、同処分の取消しを求めるとともに、減価償却額の計上の誤りを理由とする減額更正処分を求めて提訴したという事案である。

 法人側は、各事業年度において減価償却資産の帳簿価額(各減価償却資産処理後価額)を基に計算される償却限度額と同額の減価償却費の額を正味財産増減計算書に計上したわけだが、原処分庁側は各事業年度の間における減価償却に係る償却限度額は減価償却資産処理後価額を基に計算するのが正しく、各確定申告における減価償却費の損金算入額に誤りがあるとは認められないなどと主張して、法人側の請求の棄却を求めた。

 判決はまず、租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではないと述べた上で、法人税法施行令48条1項1号イの「取得価額(既にした償却の額で各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上損金の額に算入された金額がある場合には、当該金額を控除した金額)」とは、同施行令54条に基づいて計算される取得価額から、既にした償却の額で各事業年度の所得の金額等の計算上損金の額に算入された金額がある場合は、その金額を控除した金額を意味するものと解するほかはなく、移行時資産等減価償却資産についてかかる金額を計算する場合であっても、これと異なる解釈を採用する文言上の根拠は存在しないと指摘。

 この解釈に反し、移行法人の移行後最初の事業年度において、移行時資産等減価償却資産に係る「取得価額」とは、同施行令131条の6に基づいて計算される移行日における税務上の帳簿価額を意味するものと解釈する文言上の根拠はないというほかないとも断じた。その上で、各減価償却資産のうち旧定額法が適用されるものに係る損金経理額及び償却限度額は、損金経理額及び取得価額を基に計算した償却限度額であると認定し、後者の金額が前者の金額を下回っているため、損金に算入できる額は後者の金額になると判断した。

 その結果、同金額から法人側が確定申告において損金の額に算入した減価償却費の額と同額である当期における会計上の償却費(損金の額に算入した償却費)を控除した金額である更正の請求により損金の額に算入される償却費の増加額が、法人の所得金額から減額され、又は欠損金額に加算されるべきであると判示した。

 これに反して通知処分は、法人側が移行前最終事業年度に一括計上した減価償却費を損金経理額に含めず、かつ償却限度額の計算に際し、取得価額とは決算整理を経た後の移行日時点の会計上の帳簿価額を意味するという解釈を前提に、各減価償却資産の償却限度額を計算するなどしたものであるからその点において違法であるとも指摘して、原処分を取り消した。

(2023.02.17東京地裁判決、令和元年(行ウ)第539号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 いわゆる特例民法法人から一般財団法人へと移行した法人の減価償却額の計上の誤りを理由とする更正の請求を巡って償却限度額の計算方法の解釈が争われた事件で東京地裁(鎌野真敬裁判長)は、償却限度額の計算に際し、原処分庁側が取得価額とは決算整理を経た後の移行日時点の会計上の帳簿価額を意味するという解釈を前提に、各減価償却資産の償却限度額を計算したことには違法があると判示して、原処分を取り消す判決を言い渡した。 この事件は寺院の伝承の文化等を興隆する事業を行い、広く国民の教化善導を図ること等を目的とする一般財団法人が法人税等の確定申告後、減価償却額の計上の誤りを理由とする更正の請求をしたところ、更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けたため、同処分の取消しを求めるとともに、減価償却額の計上の誤りを理由とする減額更正処分を求めて提訴したという事案である。 法人側は、各事業年度において減価償却資産の帳簿価額(各減価償却資産処理後価額)を基に計算される償却限度額と同額の減価償却費の額を正味財産増減計算書に計上したわけだが、原処分庁側は各事業年度の間における減価償却に係る償却限度額は減価償却資産処理後価額を基に計算するのが正しく、各確定申告における減価償却費の損金算入額に誤りがあるとは認められないなどと主張して、法人側の請求の棄却を求めた。 判決はまず、租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではないと述べた上で、法人税法施行令48条1項1号イの「取得価額(既にした償却の額で各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上損金の額に算入された金額がある場合には、当該金額を控除した金額)」とは、同施行令54条に基づいて計算される取得価額から、既にした償却の額で各事業年度の所得の金額等の計算上損金の額に算入された金額がある場合は、その金額を控除した金額を意味するものと解するほかはなく、移行時資産等減価償却資産についてかかる金額を計算する場合であっても、これと異なる解釈を採用する文言上の根拠は存在しないと指摘。 この解釈に反し、移行法人の移行後最初の事業年度において、移行時資産等減価償却資産に係る「取得価額」とは、同施行令131条の6に基づいて計算される移行日における税務上の帳簿価額を意味するものと解釈する文言上の根拠はないというほかないとも断じた。その上で、各減価償却資産のうち旧定額法が適用されるものに係る損金経理額及び償却限度額は、損金経理額及び取得価額を基に計算した償却限度額であると認定し、後者の金額が前者の金額を下回っているため、損金に算入できる額は後者の金額になると判断した。 その結果、同金額から法人側が確定申告において損金の額に算入した減価償却費の額と同額である当期における会計上の償却費(損金の額に算入した償却費)を控除した金額である更正の請求により損金の額に算入される償却費の増加額が、法人の所得金額から減額され、又は欠損金額に加算されるべきであると判示した。 これに反して通知処分は、法人側が移行前最終事業年度に一括計上した減価償却費を損金経理額に含めず、かつ償却限度額の計算に際し、取得価額とは決算整理を経た後の移行日時点の会計上の帳簿価額を意味するという解釈を前提に、各減価償却資産の償却限度額を計算するなどしたものであるからその点において違法であるとも指摘して、原処分を取り消した。(2023.02.17東京地裁判決、令和元年(行ウ)第539号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2023.09.15 15:24:58