上告審も控除対象仕入税額は課税売上割合に基づく金額と判決
不動産の売買等を目的とする法人による将来の転売を目的としたマンションの購入に係る各課税仕入れが課税対応課税仕入れと共通対応課税仕入れのいずれに区分されるべきなのかその用途区分の判断が争われた事件で最高裁(安浪亮介裁判長)は、一審で法人側の勝訴の後、逆転して国側の主張を認めた原審の判断(2021.07.29東京高裁判決)を正当として是認、法人側の請求を棄却する判決を言い渡した。
この事件は、不動産の売買等を目的とする法人が将来の転売を目的にしたマンション84棟の購入が課税対応課税仕入れに区分されると判断、各課税仕入れに係る消費税額の全額を課税標準額に対する消費税額から控除して消費税等の申告をしたのが発端となった。
これに対して原処分庁は、建物の販売(課税資産の譲渡等)のみならず住宅の貸付け(その他の資産の譲渡等)も目的としたものであるから各課税仕入れは課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの(共通対応課税仕入れ)に区分すべきであり、各課税仕入れに係る消費税額の一部しか控除することができないと判断、消費税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきた。
そこで法人側が、原処分の取消しを求めて提訴したところ、一審の東京地裁が法人側の請求を認容したため、判決内容を不服とした原処分庁側が一審判決の取消しを求めて控訴したわけだ。その結果、控訴審は、各課税仕入れは課税対応課税仕入れ及び非課税対応課税仕入れのいずれにも該当せず、共通対応課税仕入れに該当すると解するのが相当と判示して法人側の請求を棄却する逆転判決を言い渡したため、法人側が更に高裁判決の取消しを求めて上告していたという事案である。
上告審はまず、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等の双方に対応する課税仕入れは、その事業に関する事情等を問うことなく、共通対応課税仕入れに該当すると解するのが消費税法の趣旨に沿うと解釈。このように解することは、課税仕入れを課税対応課税仕入れ、非課税対応課税仕入れ及び共通対応課税仕入れに区分する消費税法30条2項1号の文理に照らしても自然であるということができると指摘した。
その上で、課税対応課税仕入れとは、その事業者の事業において課税資産の譲渡等にのみ対応する課税仕入れをいい、課税資産の譲渡等のみならずその他の資産の譲渡等にも対応する課税仕入れは全て共通対応課税仕入れに該当すると解するのが相当であるから、各課税仕入れに係る控除対象仕入税額は各課税仕入れに係る消費税額の全額ではなく、これに課税売上割合を乗じて計算した金額になるというべきであると判示して、控訴審の判断を正当として是認することができると言い渡した。
(2023.03.06最高裁第一小法廷判決、令和4年(行ヒ)第10号)
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