国税庁 副業通達 大幅見直し 「帳簿書類の保存」が条件に
コロナ禍で増えたサラリーマンの副業を巡り、国税庁はかねてより公表していた「収入300万円以下を原則雑所得とする」との通達改正案を撤回し、帳簿書類の保存を条件とする新たな見直し案を公表した。通達案は副業で赤字を作って給与所得を減らす節税スキームを規制する目的で作られていたが、基準の根拠が不明瞭であるなど反対意見も多く、7000件を超えるパブリックコメントが寄せられていた。
10種類ある所得区分のうち、サラリーマンが行うような副業は主に「雑所得」となるが、継続性や規模によっては「事業所得」となる。雑所得であれば、他の所得との損益通算ができない。一方、事業所得と認められれば、他の種類の所得で出した損益を通算することが可能だ。そのため、副業の事業所得で経費を多く計上してあえて赤字を出すことで、給与所得と通算して税額を減らすケースが散見されていた。
国税庁が8月にパブコメとして公表した案は、副業収入が300万円を超えないかぎり、原則として雑所得として扱うというものだった。反証があれば事業所得と認める可能性も残していたが、パブコメでは「実態を見て判断すべきであり、形式的な基準を設けるべきではない」、「300万円という基準の根拠が不明である」など反対する声が相次いだ。
これを受け、10月7日に公表されたパブコメ結果では、300万円の形式基準が全面的に廃止された。それに代わり、事業所得かどうかは実態で判断するとの前提を置いた上で、「その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合には、雑所得に該当する」と記載し、事業所得として認められる条件として「帳簿書類の保存」を新たに設けた。
国税庁はこの根拠として、「一般に帳簿書類の保存がある場合には、営利性や有償性、継続性や反復性、自己の危険と計算における企画遂行性があると考えられる」とした上で、「所得税法上、事業所得者には、帳簿書類の保存が義務づけられている点に鑑み、帳簿書類の保存の有無で所得区分を判定することとし、通達を別添のとおり修正」したと見直しの理由を説明している。
提供元:エヌピー通信社