浄化・改善費用相当額を控除すべきと判断、全部取消し
相続した土地の評価を巡って、評価の際に、土壌汚染がないものとした場合の評価額から浄化・改善費用相当額を控除することができるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、相続開始日において土壌汚染のある土地と認められ、評価対象地の評価に当たっては浄化・改善費用相当額を控除すべきと判断、原処分を全部取り消した。
この事件は、被相続人から土地を相続した者(審査請求人)が、相続財産である土地は土壌汚染地であるとして、その土地の評価について浄化・改善費用に相当する金額を控除して相続税の申告をしたのが発端。これに対して原処分庁が、土壌汚染対策法に規定する汚染の除去等の措置を講ずることが必要な区域に指定等がされていないため、浄化・改善費用の負担が確実に発生するとはいえないとして更正処分等をしてきたことから、請求人が更正処分等の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。
原処分庁側は、評価対象地は法令等によって土壌汚染の除去等の措置を講ずる義務が生じておらず、相続した各土地の価格形成に影響を及ぼすような土壌汚染は認められないから、各土地の評価に当たって、土壌汚染がないものとした場合の評価額から浄化・改善費用相当額を控除する必要はない旨主張して、審査請求の棄却を求めた。
裁決は、各土地は、相続開始日において土壌汚染対策法所定の基準を超える特定有害物質を地中に含有していたことが認められ、土壌汚染のある土地と認めるのが相当であることから、各土地の評価に当たっては浄化・改善費用相当額を控除すべきであると指摘。
そして、各土地及びその周辺の状況や土壌汚染の状況から、各土地について最有効使用ができる最も合理的な土壌汚染の除去等の措置は掘削除去であると認められるところ、請求人が主張する土壌汚染対策工事の見積額の算定過程にも特段不合理な点は見当たらず、浄化・改善費用の金額として相当であると認められるとも指摘した。
その結果、各土地の評価に当たり、土壌汚染がないものとした場合の評価額から、浄化・改善費用相当額として本件各見積額の80%相当額を控除して評価するのが相当であると判断した。つまり、法令等により土壌汚染の除去等の措置を講ずる義務が生じていない評価対象地であっても、相続開始日に土壌汚染対策法所定の基準を超える特定有害物質を地中に含有していたことが認められ、土壌汚染のある土地と認めるのが相当であるとして、評価対象地の評価の際には浄化・改善費用相当額を控除すべきであると判断したことがポイントになった事案である。
(2021.12.01 国税不服審判所裁決)
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