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とうとう来たか 与党税調が法人増税を検討 世界的トレンドに「あいのり」

 与党の税制調査会で、法人税の実効税率を引き上げる案が浮上している。コロナ禍による財政悪化を理由に、英国や米国など法人増税に踏み切った国は少なくない。日本でも世界的な流れにのるかたちで、1984年以来、約40年ぶりとなる法人増税が具体化しつつある。
 与党税調で検討されているのは、法人税の実効税率引き上げと、設備投資に対する積極的な減税を組み合わせる仕組みだ。企業の利益に対する課税を強化しつつ、設備投資にインセンティブを与えることで、岸田政権の掲げる「貯蓄から投資」を促す狙いがある。実効税率の引き上げ幅と、設備投資減税による優遇が同程度となる仕組みを想定しているという。年末にまとめる2023年度税制改正へ盛り込むことを目指し、検討を進める。
 21世紀以降、国境を超えて活動を行うIT企業が台頭してきたことで、世界は法人税の減税競争に突入した。特にGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)を代表とする多国籍IT企業が法人税率の低い国にオフィスを移転する動きを進めたことにより、それらの企業を誘致するための法人減税競争が過熱してきた経緯がある。
 だがそうした状況に訪れた転機が、昨年に行われたOECD主導の国際合意だ。法人税に世界共通の最低税率を設けることで、法人税の引き下げ競争に一定の終止符が打たれた。折しもコロナ禍での経済対策によって各国の財政が悪化している状況でもあり、英国や米国は相次いで、数十年ぶりの法人増税を決定。日本でも、昨年6月にまとめた『骨太の方針』で、歳入増に向けた取り組みについて、アメリカやイギリスの法人増税の動きに言及した上で「参考とする」と記述していた。
 ただし法人増税に当たっては、経済界からの強い反発が予想される。長引くコロナ禍で経済の先行きに不透明感が漂っていることに加え、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原材料価格の高騰で、業績が今後厳しさを増す可能性も十分にある。設備投資の多い業界とそうでない業界で実質的な優遇内容に差が出る可能性もあり、検討はまだ道半ばといえるだろう。

提供元:エヌピー通信社

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 与党の税制調査会で、法人税の実効税率を引き上げる案が浮上している。コロナ禍による財政悪化を理由に、英国や米国など法人増税に踏み切った国は少なくない。日本でも世界的な流れにのるかたちで、1984年以来、約40年ぶりとなる法人増税が具体化しつつある。 与党税調で検討されているのは、法人税の実効税率引き上げと、設備投資に対する積極的な減税を組み合わせる仕組みだ。企業の利益に対する課税を強化しつつ、設備投資にインセンティブを与えることで、岸田政権の掲げる「貯蓄から投資」を促す狙いがある。実効税率の引き上げ幅と、設備投資減税による優遇が同程度となる仕組みを想定しているという。年末にまとめる2023年度税制改正へ盛り込むことを目指し、検討を進める。 21世紀以降、国境を超えて活動を行うIT企業が台頭してきたことで、世界は法人税の減税競争に突入した。特にGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)を代表とする多国籍IT企業が法人税率の低い国にオフィスを移転する動きを進めたことにより、それらの企業を誘致するための法人減税競争が過熱してきた経緯がある。 だがそうした状況に訪れた転機が、昨年に行われたOECD主導の国際合意だ。法人税に世界共通の最低税率を設けることで、法人税の引き下げ競争に一定の終止符が打たれた。折しもコロナ禍での経済対策によって各国の財政が悪化している状況でもあり、英国や米国は相次いで、数十年ぶりの法人増税を決定。日本でも、昨年6月にまとめた『骨太の方針』で、歳入増に向けた取り組みについて、アメリカやイギリスの法人増税の動きに言及した上で「参考とする」と記述していた。 ただし法人増税に当たっては、経済界からの強い反発が予想される。長引くコロナ禍で経済の先行きに不透明感が漂っていることに加え、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原材料価格の高騰で、業績が今後厳しさを増す可能性も十分にある。設備投資の多い業界とそうでない業界で実質的な優遇内容に差が出る可能性もあり、検討はまだ道半ばといえるだろう。提供元:エヌピー通信社
2022.05.19 16:22:34