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タワマン節税訴訟 国税の〝宝刀〟にお墨付き 相続税対策への影響は必至

 実勢価格と相続税路線価のかい離を利用した「タワマン節税」の是非を巡って納税者と国税当局が争った裁判で、最高裁は4月19日、国税当局の言い分を全面的に認める判決を下した。税法上は合法であっても当局が「税逃れ」とみなせば否認できる、いわゆる「総則6項」の明確な適用基準は示されず、今後は当局がより幅広い事案で総則6項を利用する可能性も否定できない。
 裁判で争われたのは、原告が相続で取得した高層マンションの相続税評価額の正当性だ。故人は2棟のマンションを計14億円ほどで購入したが、高層階の実勢価格が反映されない相続税路線価では2棟の評価額は約3億円ほどだった。相続人が路線価に従い申告をしたところ、当局が「路線価による評価は適当ではない」として否認し、約3億円を追徴課税した事例だ。こうした実勢価格と路線価のかい離を利用した節税策は「タワマン節税」と呼ばれ、多くの富裕層が相続税対策に活用してきたが、近年では当局は積極的にこれらの税務処理を否認し、追徴課税を行っている。
 このとき当局が否認の根拠として使うのが、相続税の財産評価のルールを定めた財産評価基本通達の総則の第6項、いわゆる「総則6項」だ。同項では、通達によって評価することが「著しく不適当」と認定できるケースに限り、「国税庁長官の指示を受けて評価する」と規定している。評価ルール全体における例外規定とも呼べる内容で、この項目を適用すれば最終的には国税側の〝言い値〟が適用されることになる。「総則6項は伝家の宝刀」と言われるゆえんだ。
 19日の判決で長嶺安政裁判長は、「路線価などによる画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反する事情がある場合は(例外規定を用いる)合理的な理由がある」との判断を示した。その上で、今回の事例では相続税の負担軽減を意図して不動産の購入や資金の借り入れが行われ、実際に相続税額がゼロになったことなどを指摘した。「他の納税者との間に看過しがたい不均衡が生じ、租税負担の公平に反する」として、例外規定の適用を認めた。二審判決を覆す際に開かれることの多い弁論が3月に開かれたため、納税者の逆転勝訴の可能性もささやかれていたが、ふたを開けてみれば当局の言い分を全面的に認めた二審判決をそのまま支持したかたちだ。
 判決を受け、原告代理人の増田英敏弁護士らは同日、司法記者クラブで記者会見し、「最高裁が(総則6項適用の)基準を明示してくれることを期待したが、今回の判決は基準を定義したとは言えない。判決が確定したことで納税者が納税額を予見できないという問題が解決されないだけでなく、国税による恣意的な課税にブレーキがかからなくなる」と語った。

提供元:エヌピー通信社

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 実勢価格と相続税路線価のかい離を利用した「タワマン節税」の是非を巡って納税者と国税当局が争った裁判で、最高裁は4月19日、国税当局の言い分を全面的に認める判決を下した。税法上は合法であっても当局が「税逃れ」とみなせば否認できる、いわゆる「総則6項」の明確な適用基準は示されず、今後は当局がより幅広い事案で総則6項を利用する可能性も否定できない。 裁判で争われたのは、原告が相続で取得した高層マンションの相続税評価額の正当性だ。故人は2棟のマンションを計14億円ほどで購入したが、高層階の実勢価格が反映されない相続税路線価では2棟の評価額は約3億円ほどだった。相続人が路線価に従い申告をしたところ、当局が「路線価による評価は適当ではない」として否認し、約3億円を追徴課税した事例だ。こうした実勢価格と路線価のかい離を利用した節税策は「タワマン節税」と呼ばれ、多くの富裕層が相続税対策に活用してきたが、近年では当局は積極的にこれらの税務処理を否認し、追徴課税を行っている。 このとき当局が否認の根拠として使うのが、相続税の財産評価のルールを定めた財産評価基本通達の総則の第6項、いわゆる「総則6項」だ。同項では、通達によって評価することが「著しく不適当」と認定できるケースに限り、「国税庁長官の指示を受けて評価する」と規定している。評価ルール全体における例外規定とも呼べる内容で、この項目を適用すれば最終的には国税側の〝言い値〟が適用されることになる。「総則6項は伝家の宝刀」と言われるゆえんだ。 19日の判決で長嶺安政裁判長は、「路線価などによる画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反する事情がある場合は(例外規定を用いる)合理的な理由がある」との判断を示した。その上で、今回の事例では相続税の負担軽減を意図して不動産の購入や資金の借り入れが行われ、実際に相続税額がゼロになったことなどを指摘した。「他の納税者との間に看過しがたい不均衡が生じ、租税負担の公平に反する」として、例外規定の適用を認めた。二審判決を覆す際に開かれることの多い弁論が3月に開かれたため、納税者の逆転勝訴の可能性もささやかれていたが、ふたを開けてみれば当局の言い分を全面的に認めた二審判決をそのまま支持したかたちだ。 判決を受け、原告代理人の増田英敏弁護士らは同日、司法記者クラブで記者会見し、「最高裁が(総則6項適用の)基準を明示してくれることを期待したが、今回の判決は基準を定義したとは言えない。判決が確定したことで納税者が納税額を予見できないという問題が解決されないだけでなく、国税による恣意的な課税にブレーキがかからなくなる」と語った。提供元:エヌピー通信社
2022.04.21 16:50:48