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残余持分に対応する部分のみに貸付業務との関連性を認定、棄却

 不動産貸付けの業務用の建物の建築費用等に充てられた借換借入金利子の処理を巡って不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額の判断が争われた事件で千葉地裁(内野俊夫裁判長)は、建物の一部の持分譲渡がされた場合にはその残余持分に対応する部分のみに不動産貸付業務との関連性が認められ、また持分譲渡を受けた者が相続によって借入金に係る債務及び残余持分を承継した場合にも、残余持分に対応する部分にのみ相続人の不動産貸付けの業務との関連性が認められると判断、納税者側の訴えを棄却した。

 この事件は、母親が貸付けの業務に供していた建物の持分譲渡を受け、共に貸付けの業務に供していたことから、相続に伴い、母親が貸付けの業務に供していた建物の残余持分他の不動産を取得するとともに、貸付けの業務等に係る複数の借入金の一括返済のためにされた借換債務、貸付けの業務を承継したことから、借換債務の支払利子は不動産所得の金額の計算上必要経費に全額算入できると判断して確定申告をしたのが発端となった。

 これに対して原処分庁が、必要経費に算入すべき金額は借換債務の支払利子の金額に業務関連割合を乗じた金額に限られると判断、更正の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、納税者側が原処分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 原処分庁側は、借換債務の支払利子の金額のうち必要経費に算入すべき金額は借換債務の支払利子の金額に業務関連割合を乗じた金額に限られると主張して棄却を求めた。因みに、この業務関連割合とは一括返済直前の4つの借入金残高に、一括返済直前の建物の取得に係る2つの借入金残高に4分の1を乗じた金額における、一括返済の直前の母親の貸付けの業務に係る2つの借入金残高の合計額が占める割合のことである。

 判決はまず、借入金利子の必要経費該当性の判断枠組みを示した上で、各借入金のうち被相続人の貸付けの業務との関連性が認められる部分及び借換借入金における相続人の貸付けの業務との関連性が認められる部分の金額が占める割合を判断、借換借入金は被相続人が一括返済日の翌日から相続までに借換借入金について行った各返済及び相続人が相続後に借換借入金について行った各返済により、被相続人又は相続人の業務関連性が認められる部分と認められない部分との比率が変更されることなく均等に消滅したと指摘。

 その結果、建物の一部の持分が譲渡されたような場合は、残余持分に対応する部分のみに不動産貸付けの業務との関連性が認められ、その後、持分譲渡を受けた者が相続により借入金に係る債務及び残余持分を承継した場合にも、残余持分に対応する部分にのみ相続人の貸付業務との関連性が認められると判示して、納税者側の訴えを棄却した。

(2020.06.30千葉地裁判決、平成31年(行ウ)第6号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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2021.11.15 16:16:00