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申告漏れは誤解した可能性があると指摘、重加算税を取消し

 相続税の申告を期限内にした際にみなし相続財産である死亡保険金が申告漏れだったことから修正申告をしたことを巡って、国税不服審判所は納税者側が申告漏れとなった死亡保険金の存在を税理士に伝えなかったことだけをもって、当初から過少に申告することを意図し、かつその意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとまではいえないことから重加算税の賦課要件は充足しないと判断して、重加算税の賦課決定処分を取り消した。

 この事件は、被相続人の養子で専ら製品の品質管理等の業務に従事してきた会社員である者(審査請求人)が、相続税の期限内申告の際に死亡保険金が申告漏れだったことから修正申告をしたのが発端となった。

 これに対して原処分庁が、みなし相続財産である死亡保険金を申告しなかったことは隠蔽に基づくものであると認定、重加算税の賦課決定処分をしてきたため、会社員である納税者が隠蔽の事実はないと主張して、重加算税の賦課決定処分のうち過少申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めて審査請求したという事案であるが、被相続人は、一切の財産を請求人である会社員に相続させる旨及び信託銀行を遺言執行者として指定する旨の公正証書遺言をしていた。

 裁決は、まず最高裁平成7年4月28日判決を引き合いに、重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合に賦課要件が満たされるという解釈を示した。

 その上で、請求人が保険金は相続税の課税の対象とならないものと誤解した可能性が否定できず、その誤解の下に保険金の存在を税理士に伝えなかった可能性も否定できないと指摘。また、調査の初日に保険金の入金事績が記録された請求人名義の銀行口座に係る通帳を原処分庁の調査担当職員に提示するなど、保険金の入金の事実を調査担当職員に対して隠そうとはしていなかったことが認められ、その事実は誤解があった可能性を高める事実といえるとも指摘した。

 したがって、請求人が保険金の存在を税理士に伝えなかったことをもって、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとまではいえないという認定から、重加算税の賦課要件は充足しないと判断、重加算税の賦課決定処分を取り消した。

(2021.03.23国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 相続税の申告を期限内にした際にみなし相続財産である死亡保険金が申告漏れだったことから修正申告をしたことを巡って、国税不服審判所は納税者側が申告漏れとなった死亡保険金の存在を税理士に伝えなかったことだけをもって、当初から過少に申告することを意図し、かつその意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとまではいえないことから重加算税の賦課要件は充足しないと判断して、重加算税の賦課決定処分を取り消した。 この事件は、被相続人の養子で専ら製品の品質管理等の業務に従事してきた会社員である者(審査請求人)が、相続税の期限内申告の際に死亡保険金が申告漏れだったことから修正申告をしたのが発端となった。 これに対して原処分庁が、みなし相続財産である死亡保険金を申告しなかったことは隠蔽に基づくものであると認定、重加算税の賦課決定処分をしてきたため、会社員である納税者が隠蔽の事実はないと主張して、重加算税の賦課決定処分のうち過少申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めて審査請求したという事案であるが、被相続人は、一切の財産を請求人である会社員に相続させる旨及び信託銀行を遺言執行者として指定する旨の公正証書遺言をしていた。 裁決は、まず最高裁平成7年4月28日判決を引き合いに、重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合に賦課要件が満たされるという解釈を示した。 その上で、請求人が保険金は相続税の課税の対象とならないものと誤解した可能性が否定できず、その誤解の下に保険金の存在を税理士に伝えなかった可能性も否定できないと指摘。また、調査の初日に保険金の入金事績が記録された請求人名義の銀行口座に係る通帳を原処分庁の調査担当職員に提示するなど、保険金の入金の事実を調査担当職員に対して隠そうとはしていなかったことが認められ、その事実は誤解があった可能性を高める事実といえるとも指摘した。 したがって、請求人が保険金の存在を税理士に伝えなかったことをもって、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとまではいえないという認定から、重加算税の賦課要件は充足しないと判断、重加算税の賦課決定処分を取り消した。(2021.03.23国税不服審判所裁決)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.10.25 16:16:30