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事業再構築補助金 圧縮記帳が適用可能 初年度の税負担を軽減

 新型コロナウイルスの影響で収入を減らした事業者の新分野展開などに最大1億円を補助する「事業再構築補助金」について、設備の取得価額から補助金分を差し引ける「圧縮記帳」を利用できることが明確化された。同補助金の交付を担当する中小企業基盤整備機構(機構)が8月12日に明らかにした。
 圧縮記帳とは、補助金を用いた設備投資にかかる税負担を軽減するための仕組み。国は企業の設備投資を促すため様々な補助金制度を設けているが、国や自治体から交付された補助金は会社の「益金」として、法人税の対象になる。額面でたとえ100万円の補助金を受け取れたとしても全額は自由にできず、その一部はもとから税金として納める分が含まれていることになる。
 しかし機械設備を取得するという目的で受け取った補助金にすぐに法人税がかかると、設備を買った後に手元に納税資金が残らず、経営が苦しくなる恐れが生じる。中小企業を支援するという補助金の趣旨に反するため、補助金で固定資産を取得したときには、圧縮記帳と呼ばれる税務上の特殊な処理を行うことが認められている。具体的には、設備の取得価額から補助分を差し引いて、その年度の利益から除外することが可能だ。つまり80万円の補助金を使って100万円の機械を買ったなら、取得価額はその差額である20万円となる。このような特殊な処理によって、投資年度にかかる法人税負担を抑えられる。補助金によって得た利益を実態より「圧縮」するというわけだ。
 圧縮記帳は国や自治体から交付される補助金に適用できる制度だが、新型コロナ対策の事業再構築補助金については、直接国が補助するものではなく機構が交付するため、圧縮記帳が可能かどうか確かでなかった。機構はこの点につき、中小企業庁を通じて国税庁に確認し、このほど「本補助金のうち固定資産の取得に充てるための補助金については、圧縮記帳等の適用が認められる」との回答を受け取ったと報告した。一方、技術導入費や専門家経費といった固定資産取得以外の使い方については、圧縮記帳はできないという。
 圧縮記帳を利用する上で注意したいのは、圧縮記帳はあくまで課税の繰り延べに過ぎず、税負担がトータルで減るわけではないという点だ。取得価額が減るということは年々の減価償却で損金にできる額が減ることを意味し、2年目以降は圧縮記帳をしない場合より法人税負担が重くなってしまう。トータルでみれば繰り延べをしてもしなくても法人税負担は同額となる。
 なお事業再構築補助金は、2020年10月以降の連続する6カ月のうち、任意の3カ月の売上高がコロナ以前の同3カ月に比べて1割以上減少している事業者を対象に、①新分野展開、②事業転換、③業種転換、④業態転換、⑤事業再編――にかかる費用の3分の2を補助するもの。8月下旬から、全5回のうち3回目の申請受付が始まる予定となっている。

提供元:エヌピー通信社

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 新型コロナウイルスの影響で収入を減らした事業者の新分野展開などに最大1億円を補助する「事業再構築補助金」について、設備の取得価額から補助金分を差し引ける「圧縮記帳」を利用できることが明確化された。同補助金の交付を担当する中小企業基盤整備機構(機構)が8月12日に明らかにした。 圧縮記帳とは、補助金を用いた設備投資にかかる税負担を軽減するための仕組み。国は企業の設備投資を促すため様々な補助金制度を設けているが、国や自治体から交付された補助金は会社の「益金」として、法人税の対象になる。額面でたとえ100万円の補助金を受け取れたとしても全額は自由にできず、その一部はもとから税金として納める分が含まれていることになる。 しかし機械設備を取得するという目的で受け取った補助金にすぐに法人税がかかると、設備を買った後に手元に納税資金が残らず、経営が苦しくなる恐れが生じる。中小企業を支援するという補助金の趣旨に反するため、補助金で固定資産を取得したときには、圧縮記帳と呼ばれる税務上の特殊な処理を行うことが認められている。具体的には、設備の取得価額から補助分を差し引いて、その年度の利益から除外することが可能だ。つまり80万円の補助金を使って100万円の機械を買ったなら、取得価額はその差額である20万円となる。このような特殊な処理によって、投資年度にかかる法人税負担を抑えられる。補助金によって得た利益を実態より「圧縮」するというわけだ。 圧縮記帳は国や自治体から交付される補助金に適用できる制度だが、新型コロナ対策の事業再構築補助金については、直接国が補助するものではなく機構が交付するため、圧縮記帳が可能かどうか確かでなかった。機構はこの点につき、中小企業庁を通じて国税庁に確認し、このほど「本補助金のうち固定資産の取得に充てるための補助金については、圧縮記帳等の適用が認められる」との回答を受け取ったと報告した。一方、技術導入費や専門家経費といった固定資産取得以外の使い方については、圧縮記帳はできないという。 圧縮記帳を利用する上で注意したいのは、圧縮記帳はあくまで課税の繰り延べに過ぎず、税負担がトータルで減るわけではないという点だ。取得価額が減るということは年々の減価償却で損金にできる額が減ることを意味し、2年目以降は圧縮記帳をしない場合より法人税負担が重くなってしまう。トータルでみれば繰り延べをしてもしなくても法人税負担は同額となる。 なお事業再構築補助金は、2020年10月以降の連続する6カ月のうち、任意の3カ月の売上高がコロナ以前の同3カ月に比べて1割以上減少している事業者を対象に、①新分野展開、②事業転換、③業種転換、④業態転換、⑤事業再編――にかかる費用の3分の2を補助するもの。8月下旬から、全5回のうち3回目の申請受付が始まる予定となっている。提供元:エヌピー通信社
2021.08.19 16:15:59