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実質的に退職していなかったとは認められないと判断、取消し

 代表取締役及び取締役を辞任した元代表者に支給した役員退職金を巡って、支給の事実、退職の事実の有無の判断が争われた事件で国税不服審判所は、辞任後も継続して法人の事業運営上の重要事項に参画していたとは認められず、また法人を実質的に退職していなかったとも認められないと指摘した上で、元代表者に支払った退職金は損金の額に算入されると判断、原処分の全部を取り消した。

 この事件は、不動産の賃貸等を営む株式会社である同族会社(審査請求人)が元代表取締役に対して支給した退職金の金額を損金の額に算入して法人税等の申告を行ったのが発端になったもので、これに対して原処分庁が、元代表取締役は、登記上退任した後も会社の経営に従事しており、実質的に退職したとは認められないことから、元代表者に支払った金額は退職給与として損金の額に算入することは認められないと判断、法人税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきた。

 そこで同族会社側が、元代表取締役は形式的にも実質的にも退職したのであるから、その金額は損金の額に算入されると主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 これに対して原処分庁側は、1)同族法人の経営会議への出席及び指示命令、2)経営会議以外での指示命令、さらに3)金融機関等との交渉――等の事実関係から、従来どおり、同族会社の経営に従事していて、みなし役員に該当するのであるから、同族会社を現実に離脱し、あるいは実質的に退職したとは認められないという認定の下に、法人税法34条1項に規定する退職給与には該当しないと反論、元代表者に対する金員の額を損金の額に算入することはできないと主張して審査請求の棄却を求めたわけだ。

 裁決はまず、原処分庁が退職の事実がないことの認定の根拠として摘示する各事実には、いずれもその裏付けとなる退職当時の客観的な証拠がなく、また、各関係者の申述においても、元代表者の同族会社への具体的な関与状況が明らかではないと指摘。

 また、元代表者は、退職後に同族法人から報酬等を受領していないことが認められ、元代表者の退職後に同族会社の代表取締役となった者が、その代表取締役としての職務を全く行っていなかったと認めるに足りる証拠もないことからすると、元代表者が退職後も継続して、各法人の経営に従事していたと認めることはできないため、元代表者に支払った金員は退職給与として損金の額に算入されると判断、原処分の全部を取り消した。

(2020.12.15 国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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2021.08.11 15:11:57