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職務分掌変更後は使用人兼務役員には該当しないと判断、棄却

 取締役設置会社である同族会社の取締役に支払った賞与が使用人兼務役員に対する使用人職務分に該当するものであるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、その取締役が職務分掌の変更によって使用人としての職制上の地位を有しないことになったと認定した上で職務分掌以後のものは使用人兼務役員には該当しないと判断、賞与の損金算入を否定した。しかし、分掌変更前の賞与については損金算入を認めたことから、結果的に原処分の一部取消しという裁決結果になった。

 この事件は、水産食料品の製造、加工及び販売等を行う取締役設置会社である同族会社が審査請求したもので、取締役に支給した給与の一部を使用人兼務役員に対する使用人としての職務に対するものとして損金の額に算入して申告したことを受けて、原処分庁がその給与は使用人兼務役員に対する使用人としての職務に対するものに該当しないことを理由に損金の額には算入されないと判断、法人税等の更正処分等をしてきたのが発端となった。

 そこで同族会社側が、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。つまり、取締役に支払った賞与が使用人兼務役員に対して支給した使用人職務分に該当するか否かが争点になった事案だが、同族会社側は、取締役が取締役に就任した後も、1)営業部の部長職である職制上の地位を有している、2)営業部長として代表取締役の指揮命令系統に属する職務を行っている、3)代表取締役の親族でもなくまた株主でもない、さらに4)実質的な意思決定の場である月例会議にも参加していない――ことを理由に、使用人兼務役員に該当しないと主張するとともに、同取締役に対して支払った賞与は使用人としての職務に対する賞与であるから、損金に算入できる旨主張して、原処分の取消しを止めたわけだ。

 裁決は、同族会社の機構上、使用人としての職制上の地位が明確に定められているところ、その取締役は同族会社及びグループ法人内での職務分掌の変更により営業部の部長職の地位を失っており、使用人としての職制上の地位を有していないことから、使用人兼務役員には該当せず、分掌変更以後に支給された賞与は損金には算入されないと判断、同族法人側の請求を斥けた。

 しかし、分掌変更前の使用人兼務役員に該当する期間に支給された賞与は、他の使用人と同様に給与規程に基づく方法で決定されているものではないものの、他の使用人に対する賞与の支給時期に支給され、また使用人としての職務の対価であったことを否定するに足りる証拠はないため損金に算入されると判断、結果的には一部取消しという裁決結果になった。

(2020.12.17国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 取締役設置会社である同族会社の取締役に支払った賞与が使用人兼務役員に対する使用人職務分に該当するものであるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、その取締役が職務分掌の変更によって使用人としての職制上の地位を有しないことになったと認定した上で職務分掌以後のものは使用人兼務役員には該当しないと判断、賞与の損金算入を否定した。しかし、分掌変更前の賞与については損金算入を認めたことから、結果的に原処分の一部取消しという裁決結果になった。 この事件は、水産食料品の製造、加工及び販売等を行う取締役設置会社である同族会社が審査請求したもので、取締役に支給した給与の一部を使用人兼務役員に対する使用人としての職務に対するものとして損金の額に算入して申告したことを受けて、原処分庁がその給与は使用人兼務役員に対する使用人としての職務に対するものに該当しないことを理由に損金の額には算入されないと判断、法人税等の更正処分等をしてきたのが発端となった。 そこで同族会社側が、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。つまり、取締役に支払った賞与が使用人兼務役員に対して支給した使用人職務分に該当するか否かが争点になった事案だが、同族会社側は、取締役が取締役に就任した後も、1)営業部の部長職である職制上の地位を有している、2)営業部長として代表取締役の指揮命令系統に属する職務を行っている、3)代表取締役の親族でもなくまた株主でもない、さらに4)実質的な意思決定の場である月例会議にも参加していない――ことを理由に、使用人兼務役員に該当しないと主張するとともに、同取締役に対して支払った賞与は使用人としての職務に対する賞与であるから、損金に算入できる旨主張して、原処分の取消しを止めたわけだ。 裁決は、同族会社の機構上、使用人としての職制上の地位が明確に定められているところ、その取締役は同族会社及びグループ法人内での職務分掌の変更により営業部の部長職の地位を失っており、使用人としての職制上の地位を有していないことから、使用人兼務役員には該当せず、分掌変更以後に支給された賞与は損金には算入されないと判断、同族法人側の請求を斥けた。 しかし、分掌変更前の使用人兼務役員に該当する期間に支給された賞与は、他の使用人と同様に給与規程に基づく方法で決定されているものではないものの、他の使用人に対する賞与の支給時期に支給され、また使用人としての職務の対価であったことを否定するに足りる証拠はないため損金に算入されると判断、結果的には一部取消しという裁決結果になった。(2020.12.17国税不服審判所裁決)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.08.06 16:24:18