HOME ニュース一覧 第三者に利益を与える処分に該当しないと判断、全部取消し

税ニュース

第三者に利益を与える処分に該当しないと判断、全部取消し

 不実の登記がなされている不動産を滞納法人が請求人に取得させた行為が、第二次納税義務の第三者に利益を与える処分に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、不動産があたかも請求人所有であったかのような会計処理がされていることをもってその所有権を請求人に取得させたとは認められないと判断、原処分を取り消した。

 この事件は、滞納法人が審査請求人を所有者とする不実の登記がされている不動産を請求人に取得させた行為が第三者に利益を与える処分に該当すると原処分庁が認定、第二次納税義務の納付告知処分を行うとともに、第二次納税義務に係る国税を徴収するため督促処分を行い、請求人が所有する不動産の差押処分をしたのが発端となった。

 そこで請求人が、その不動産は売買契約に基づいて取得したものであり、滞納法人の所有不動産ではないから第三者に利益を与える処分はなかったとして、原処分の全部取消しを求めて審査請求した事案である。

 請求人側は、買主を滞納法人とする先の売買契約が解除合意され、その後、買主を請求人とする売買契約が成立していてこれを無効とする事情はなく、後の売買契約に基づいて請求人名義で不実の登記がされた不動産を取得した旨主張した。

 一方、原処分庁側は、請求人を所有者とする不実の登記がされた各不動産について、1)その売買代金を仮払金として計上していた滞納法人が売買後、請求人への貸付金に振り替え、請求人が各不動産の賃料収入を売買時から遡って計上したこと、2)滞納法人の代表者が請求人も支配できる立場にあり、税務調査を切り抜けるためにこの会計処理をしたこと――等を理由に、会計処理の日に各不動産の所有権が滞納法人から請求人に移転している旨主張した。

 裁決はまず、請求人の主張に対しては、事実関係から、請求人が後の売買契約に係る契約書を作成する意思は有していたとしても、その作成によって各不動産を請求人が買い受ける旨の意思表示がされたものとは認められないと指摘するとともに、仮に、後の売買契約書等の作成によって、請求人等がこれらの書面に記載されたとおりの意思表示をしたと認められるとしても、内心の意思とは異なる意思表示がされ、これを売主も認識していたといえるから、いずれにしても民法93条(心裡留保)ただし書きから、後の売買契約等は無効になる指摘。

 また、原処分庁側の主張に対しては、滞納法人は、会計処理の日以降も各不動産の賃料収入を受領しており、その余の事情を考慮しても、各不動産の所有権が請求人に移転したと認めるに足りる証拠もなく、会計処理の日に各不動産の所有権が滞納法人から請求人に移転したとは認められないと判断して斥けた。結局、滞納法人から請求人に対して、国税徴収法39条が定める第三者に利益を与える処分があったと認めることはできないと判断、納付告知処分は違法としてその全部を取り消している。

(2020.07.28国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

この記事のカテゴリ

関連リンク

令和2年度査察、告発分の脱税総額は過去最少の約69億円

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


税ニュース
/news/tax/2021/img/img_zei_01_s.jpg
 不実の登記がなされている不動産を滞納法人が請求人に取得させた行為が、第二次納税義務の第三者に利益を与える処分に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、不動産があたかも請求人所有であったかのような会計処理がされていることをもってその所有権を請求人に取得させたとは認められないと判断、原処分を取り消した。 この事件は、滞納法人が審査請求人を所有者とする不実の登記がされている不動産を請求人に取得させた行為が第三者に利益を与える処分に該当すると原処分庁が認定、第二次納税義務の納付告知処分を行うとともに、第二次納税義務に係る国税を徴収するため督促処分を行い、請求人が所有する不動産の差押処分をしたのが発端となった。 そこで請求人が、その不動産は売買契約に基づいて取得したものであり、滞納法人の所有不動産ではないから第三者に利益を与える処分はなかったとして、原処分の全部取消しを求めて審査請求した事案である。 請求人側は、買主を滞納法人とする先の売買契約が解除合意され、その後、買主を請求人とする売買契約が成立していてこれを無効とする事情はなく、後の売買契約に基づいて請求人名義で不実の登記がされた不動産を取得した旨主張した。 一方、原処分庁側は、請求人を所有者とする不実の登記がされた各不動産について、1)その売買代金を仮払金として計上していた滞納法人が売買後、請求人への貸付金に振り替え、請求人が各不動産の賃料収入を売買時から遡って計上したこと、2)滞納法人の代表者が請求人も支配できる立場にあり、税務調査を切り抜けるためにこの会計処理をしたこと――等を理由に、会計処理の日に各不動産の所有権が滞納法人から請求人に移転している旨主張した。 裁決はまず、請求人の主張に対しては、事実関係から、請求人が後の売買契約に係る契約書を作成する意思は有していたとしても、その作成によって各不動産を請求人が買い受ける旨の意思表示がされたものとは認められないと指摘するとともに、仮に、後の売買契約書等の作成によって、請求人等がこれらの書面に記載されたとおりの意思表示をしたと認められるとしても、内心の意思とは異なる意思表示がされ、これを売主も認識していたといえるから、いずれにしても民法93条(心裡留保)ただし書きから、後の売買契約等は無効になる指摘。 また、原処分庁側の主張に対しては、滞納法人は、会計処理の日以降も各不動産の賃料収入を受領しており、その余の事情を考慮しても、各不動産の所有権が請求人に移転したと認めるに足りる証拠もなく、会計処理の日に各不動産の所有権が滞納法人から請求人に移転したとは認められないと判断して斥けた。結局、滞納法人から請求人に対して、国税徴収法39条が定める第三者に利益を与える処分があったと認めることはできないと判断、納付告知処分は違法としてその全部を取り消している。(2020.07.28国税不服審判所裁決)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2021.06.21 16:36:35