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OECDの国際課税ルール 米国 法人税率15%提案

 法人税に世界共通の最低税率を設けることなどを盛り込む国際課税のルール作りが、7月の合意を目指して大詰めを迎えている。こうした中でアメリカ財務省は5月20日、経済協力開発機構(OECD)の作業部会で、最低税率を少なくとも15%に設定するよう提案したと発表した。
 各国はこれまで、自国への企業誘致などのために法人税率の引き下げ競争を行ってきた。一方で、巨大ITなどの多国籍企業が税率の低いアイルランドなどに拠点を置いて「課税逃れ」を行っていることが問題となっており、OECDで最低税率導入に向けた議論が行われている。現在検討されている仕組みは、企業の海外子会社が所在する国で支払う税負担率が最低税率を下回った場合、親会社のある国の税務当局が最低税率分まで追加で課税をするというもので、これにより自国の税収が安定することが期待される。
 合意に向けた追い風となっているのは、バイデン政権下でアメリカが導入を大きく後押しする立場に転換したことだ。新型コロナ禍で大幅に悪化した財政を立て直すため自国の法人税の引き上げを表明するなど、税収確保の道筋をつけることに躍起となっている。
 一方で、最低税率によっては納税資金の調達や進出先での再投資に悪影響を与えるなど海外進出する日本企業への負担にもなりかねない。アメリカは一時、「21%」を主張していたというが、これは多くの日本企業が東南アジアの拠点としているシンガポールの税率(17%)よりも高く、負担増を懸念する専門家もいた。今回、米が表明した「15%以上」はこれまでより低い数字で、多くの日本企業にとっては歓迎できる水準だろう。ただ、アイルランドは同国の現行税率12.5%を超える水準での導入には反対する見通しで、議論が難航する可能性もある。
 経済界は競争環境がこれまでよりフェアになることから最低税率の導入を歓迎している。一方で、国際的な新しい仕組みを作るにあたって各国間の調整に手間取り複雑な制度ができてしまうことや、それにより一部企業で税務に対応するためのコストが増える恐れがあるといった懸念も示している。

提供元:エヌピー通信社

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 法人税に世界共通の最低税率を設けることなどを盛り込む国際課税のルール作りが、7月の合意を目指して大詰めを迎えている。こうした中でアメリカ財務省は5月20日、経済協力開発機構(OECD)の作業部会で、最低税率を少なくとも15%に設定するよう提案したと発表した。 各国はこれまで、自国への企業誘致などのために法人税率の引き下げ競争を行ってきた。一方で、巨大ITなどの多国籍企業が税率の低いアイルランドなどに拠点を置いて「課税逃れ」を行っていることが問題となっており、OECDで最低税率導入に向けた議論が行われている。現在検討されている仕組みは、企業の海外子会社が所在する国で支払う税負担率が最低税率を下回った場合、親会社のある国の税務当局が最低税率分まで追加で課税をするというもので、これにより自国の税収が安定することが期待される。 合意に向けた追い風となっているのは、バイデン政権下でアメリカが導入を大きく後押しする立場に転換したことだ。新型コロナ禍で大幅に悪化した財政を立て直すため自国の法人税の引き上げを表明するなど、税収確保の道筋をつけることに躍起となっている。 一方で、最低税率によっては納税資金の調達や進出先での再投資に悪影響を与えるなど海外進出する日本企業への負担にもなりかねない。アメリカは一時、「21%」を主張していたというが、これは多くの日本企業が東南アジアの拠点としているシンガポールの税率(17%)よりも高く、負担増を懸念する専門家もいた。今回、米が表明した「15%以上」はこれまでより低い数字で、多くの日本企業にとっては歓迎できる水準だろう。ただ、アイルランドは同国の現行税率12.5%を超える水準での導入には反対する見通しで、議論が難航する可能性もある。 経済界は競争環境がこれまでよりフェアになることから最低税率の導入を歓迎している。一方で、国際的な新しい仕組みを作るにあたって各国間の調整に手間取り複雑な制度ができてしまうことや、それにより一部企業で税務に対応するためのコストが増える恐れがあるといった懸念も示している。提供元:エヌピー通信社
2021.05.27 16:08:54