軽種馬購入に係る売買契約は通謀虚偽表示に該当しないと判断
所有する競走馬を競馬に出走させて賞金等を得る事業を継続的に行っている者による取引先の法人から軽種馬を購入する取引に係る売買契約が通謀虚偽表示に該当するか、また農業協同組合から落札して購入した金額と各取引に係る売買金額の差額分に相当する金額が課税仕入れに該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、売買契約は契約内容のとおり履行されており、通謀虚偽表示を行う十分な動機があったとまではいえない上、それを基礎付ける証拠もないことから、通謀虚偽表示により無効であるとは認められないと判断、原処分を取り消した。
この事件は、日本中央競馬会に個人馬主として登録し、所有する競走馬を競馬に出走させて賞金等を得る事業を継続的に行っている者(審査請求人)が、取引先の法人から取得した軽種馬の代金を課税仕入れに係る支払対価の額に計上して消費税等の確定申告をしたところ、原処分庁が軽種馬の各取引に係る売買契約は通謀虚偽表示によるもので無効であることから、その代金の一部も課税仕入れに係る支払対価の額とは認められないと判断して更正処分等をしてきたのが発端となった。
そこで請求人側が、原処分庁が認定した事実には誤りがあるなどと主張して、原処分の一部取消しを求めて審査請求したという事案である。
原処分庁側は、請求人が取引先の法人から軽種馬を購入する取引に係る売買契約は通謀虚偽表示により無効であり、その実体は請求人が軽種馬生産に関する農業協同組合を通じて直接、軽種馬を購入したものであるから、取引先の法人が農業協同組合から落札して購入した金額と、各取引に係る売買金額の差額分に相当する金額は、請求人の課税仕入れに係る支払対価の額に該当しない旨主張して、審査請求の棄却を求めた。
裁決は、取引先の法人から軽種馬を購入する取引に係る売買契約は契約内容のとおり履行されており、また請求人と取引先の法人との間に通謀虚偽表示を行うような十分な動機があったとまではいえない上、これを基礎付ける証拠もないと指摘して、通謀虚偽表示により無効であると認めることはできないと判断するとともに、各取引が実体を伴わない取引であると認めることができない以上、各差額は課税仕入れに係る支払対価の額に該当するという判断を示した。
結局、更正処分は違法であり、その一部が取り消されることに伴い、これを前提としてされた賦課決定処分も違法となることから、いずれもその全部を取り消すべきであるとした。
(2020.05.19 国税不服審判所裁決)
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