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控訴審も不当性要件に該当するとした更正処分を違法と判示

 組織再編時に外国の同族法人からの借入金に係る利息を損金処理したことが「法人税の負担を不当に減少させる結果となるもの」に該当するか否かの判断が争われた事件の控訴審で東京高裁(秋吉仁美裁判長)は、原審の東京地裁の判決(2019.06.27判決)内容を支持、借入れが法人税法132条1項の不当性要件に該当するとは認められないと指摘した上で、不当性要件に該当することを前提としてされた更正処分等はいずれも違法であると判示して、国側の主張を斥ける判決を言い渡した。

 この事件は、音楽事業を目的とする内国法人が外国のグループ法人(内国法人の同族法人)からの借入れに係る支払利息を損金の額に算入して申告したことから、原処分庁が支払利息の損金算入は法人税の負担を不当に減少させるものであると認定して、法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたのが発端となった。

 そこで内国法人側が、借入れはグループ法人の組織再編の一環として行われた正当な事業目的を有する経済的合理性がある取引であることから、更正処分等は法人税法132条1項の要件を欠く違法な処分である旨主張して、原処分の取消しを求めて提訴したという事案である。

 その結果、一審の東京地裁が、借入れは法人税の負担が減少するという利益を除けば、これによって得られる経済的利益がないとか、これを行う必要性を全く欠いているということはできないため、経済的、実質的見地からも純粋経済人として不自然、不合理なものではないと指摘して法人側の請求を認容する判決を下したため、これを不服とした国側が控訴して原審判決の取消しを求めていたという事案である。

 控訴審はまず、組織再編取引等が経営の合理化、負債軽減及び財務の合理化という観点から検討すれば、不自然なものではなく、税負担の減少以外にこれを行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するといえると指摘した上で、借入れの目的は再編成等スキームの一部を成すものとしてその必要性、合理性を認めることができるという判断を示した。

 加えて、借入目的、金額、融資条件、無担保としたことの理由等を個別に検討しても、借入れが専ら経済的、実質的見地において純粋経済人として不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであるというべき事情は見当たらないとも判示した。

 結局、借入れは同族会社であるためにされた不自然、不合理な租税負担の不当回避行為とはいえず、法人税法132条1項にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」には当たらないと解するのが相当として、国側の主張を斥けた。

(2020.06.24東京高裁判決、令和1年(行コ)第213号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 組織再編時に外国の同族法人からの借入金に係る利息を損金処理したことが「法人税の負担を不当に減少させる結果となるもの」に該当するか否かの判断が争われた事件の控訴審で東京高裁(秋吉仁美裁判長)は、原審の東京地裁の判決(2019.06.27判決)内容を支持、借入れが法人税法132条1項の不当性要件に該当するとは認められないと指摘した上で、不当性要件に該当することを前提としてされた更正処分等はいずれも違法であると判示して、国側の主張を斥ける判決を言い渡した。 この事件は、音楽事業を目的とする内国法人が外国のグループ法人(内国法人の同族法人)からの借入れに係る支払利息を損金の額に算入して申告したことから、原処分庁が支払利息の損金算入は法人税の負担を不当に減少させるものであると認定して、法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたのが発端となった。 そこで内国法人側が、借入れはグループ法人の組織再編の一環として行われた正当な事業目的を有する経済的合理性がある取引であることから、更正処分等は法人税法132条1項の要件を欠く違法な処分である旨主張して、原処分の取消しを求めて提訴したという事案である。 その結果、一審の東京地裁が、借入れは法人税の負担が減少するという利益を除けば、これによって得られる経済的利益がないとか、これを行う必要性を全く欠いているということはできないため、経済的、実質的見地からも純粋経済人として不自然、不合理なものではないと指摘して法人側の請求を認容する判決を下したため、これを不服とした国側が控訴して原審判決の取消しを求めていたという事案である。 控訴審はまず、組織再編取引等が経営の合理化、負債軽減及び財務の合理化という観点から検討すれば、不自然なものではなく、税負担の減少以外にこれを行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するといえると指摘した上で、借入れの目的は再編成等スキームの一部を成すものとしてその必要性、合理性を認めることができるという判断を示した。 加えて、借入目的、金額、融資条件、無担保としたことの理由等を個別に検討しても、借入れが専ら経済的、実質的見地において純粋経済人として不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであるというべき事情は見当たらないとも判示した。 結局、借入れは同族会社であるためにされた不自然、不合理な租税負担の不当回避行為とはいえず、法人税法132条1項にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」には当たらないと解するのが相当として、国側の主張を斥けた。(2020.06.24東京高裁判決、令和1年(行コ)第213号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2020.11.16 15:56:16