お尋ね文書の提出のみでは重加算税の要件を満たさないと判断
いわゆるお尋ね文書を提出しているものの、納税者が法定申告期限までに相続税の申告をしなかった場合に、重加算税の賦課要件を満たしているか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、相続財産を過少に記載したお尋ね文書の提出のみをもって、国税通則法68条2項の重加算税の賦課要件は満たさない判断、原処分の一部を取り消した。
この事件は、納税者が税務調査を受けて相続税に係る期限後申告書を提出したところ、法定申告期限までに相続税に係る申告書を提出していなかったことから、原処分庁が重加算税の賦課要件を満たすと判断、重加算税の賦課決定処分をしてきたのが発端。この処分に対して納税者側が、重加算税の賦課要件を満たさないと反論、賦課決定処分のうち無申告加算税相当額を超える部分の取消しを求めて審査請求したという事案である。
原処分庁側は、請求人に対して、「相続税の申告等についての御案内」と題する文書及び「相続についてのお尋ね」と題する文書(いわゆるお尋ね文書)などを発送していたが、そのお尋ね文書には、注意書きとして、「あくまでも概算による結果です」及び「相続税の申告が不要な場合には、お手数ですが、この『相続についてのお尋ね』を作成していただき、税務署に提出してください」と記載されていた。
そこで原処分庁側は、請求人が意図的に「相続についてのお尋ね」と題する文書(お尋ね文書)に虚偽の記載をしてこれを提出したなどとして、重加算税の賦課要件を満たす旨主張して審査請求の棄却を求めた。というのも、お尋ね文書は課税庁が調査の要否等の判断の資料とするために、対象となる納税者に任意の提出を求めるもので、納税者がそれに虚偽の内容を記載した場合は課税庁の判断を誤らせるおそれがあることから、納税者がお尋ね文書に意図的に虚偽の記載をしてこれを提出した場合には、隠蔽又は仮装の行為があったといえるという判断に立ったためだ。
これに対して裁決は、審判所に提出された証拠資料等を精査しても、請求人がお尋ね文書に意図的に虚偽の記載をしてこれを提出したことなどを裏付けるに足りる証拠は存在せず、また請求人が当初から相続税を申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたなどとも認められないと指摘した上で、重加算税の賦課要件を満たしていないとして、原処分の一部を取り消した。
お尋ね文書の性質に鑑みれば、お尋ね文書の内容が事実と異なるということのみをもって、直ちにお尋ね文書に意図的に虚偽の記載をしてこれを提出したとまで認めることはできないという判断からだ。
提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)