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ふるさと納税訴訟の上告審は、泉佐野市の逆転勝訴で確定

 寄附金を募るために、自治体による高額な返礼品が過熱したふるさと納税だが、そうした問題を解決するため新制度に移行したふるさと納税制度の対象自治体から除外された泉佐野市(大阪府)が除外決定の取消しを求めた訴訟で最高裁(宮崎裕子裁判長)は、募集適正基準等を定める告示2条3号の規定が地方税法37条の2第2項の委任の範囲を逸脱するものである場合は、その逸脱する部分は違法なものとして効力を有しないと判示。その上で、国側の主張を認めた控訴審の判決を破棄、除外決定を取り消す判決を言い渡したことで、泉佐野市側の逆転勝訴で事件が確定した。

 この事件は、平成31年度の地方税法の改正により、いわゆるふるさと納税として個人住民税に係る特例控除の対象となる寄附金について、所定の基準に適合する地方団体は総務大臣が指定するものに限るという指定制度が導入されたことに伴い、指定の申出をした泉佐野市に対して国がその指定をしない旨の決定(不指定決定)をしたことから、同市が不指定は違法な国の関与に当たると主張、地方自治法251条の5第1項に基づき、国を相手に不指定の取消しを求め、まず、国地方係争処理委員会に審査の申出をしたのが発端。

 その結果、同委員会が総務省に再検討を勧告したものの、総務省側が除外継続を決定したため、大阪高裁に提訴したところ、同市側が不適切な方法で極めて多額の寄附金を得たと判断して不指定の取消請求を棄却したため、同市が更にその取消しを求めて上告していたという事案である。

 最高裁はまず、地方税法37条の2第2項について、関係規定の文理や総務大臣に委任の趣旨等の他、立法過程における議論を斟酌しても、指定制度の基準の策定を委任する授権の趣旨が明確に読み取れるということはできないと指摘。そうすると、募集適正基準等を定める告示2条3号の規定のうち、改正地方税法の施行前における寄附金の募集及び受領について定める部分は、地方税法37条の2第2項及び314条の7第2項の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるという判断を示した。

 また、初年度に係る指定申出につき、泉佐野市が募集適正基準等を定める告示2条3号に該当しないことを理由(不指定理由②)に指定しないことはできないと指摘。さらに、現に同市が実施している寄附金の募集の取組みの状況に鑑み、法定返礼品基準に適合するとは認められないことを理由(不指定理由③)として指定しないことはできないとも指摘した。そうした判断から、原審(大阪高裁)の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があり、破棄を免れないと判示して、同市の請求を認容した。なお、この最高裁判決には、法定意見に賛意を示した上で、2人の裁判官が補足意見を寄せている。

(2020.06.30最高裁第三小法廷判決、令和2年(行ヒ)第68号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 寄附金を募るために、自治体による高額な返礼品が過熱したふるさと納税だが、そうした問題を解決するため新制度に移行したふるさと納税制度の対象自治体から除外された泉佐野市(大阪府)が除外決定の取消しを求めた訴訟で最高裁(宮崎裕子裁判長)は、募集適正基準等を定める告示2条3号の規定が地方税法37条の2第2項の委任の範囲を逸脱するものである場合は、その逸脱する部分は違法なものとして効力を有しないと判示。その上で、国側の主張を認めた控訴審の判決を破棄、除外決定を取り消す判決を言い渡したことで、泉佐野市側の逆転勝訴で事件が確定した。 この事件は、平成31年度の地方税法の改正により、いわゆるふるさと納税として個人住民税に係る特例控除の対象となる寄附金について、所定の基準に適合する地方団体は総務大臣が指定するものに限るという指定制度が導入されたことに伴い、指定の申出をした泉佐野市に対して国がその指定をしない旨の決定(不指定決定)をしたことから、同市が不指定は違法な国の関与に当たると主張、地方自治法251条の5第1項に基づき、国を相手に不指定の取消しを求め、まず、国地方係争処理委員会に審査の申出をしたのが発端。 その結果、同委員会が総務省に再検討を勧告したものの、総務省側が除外継続を決定したため、大阪高裁に提訴したところ、同市側が不適切な方法で極めて多額の寄附金を得たと判断して不指定の取消請求を棄却したため、同市が更にその取消しを求めて上告していたという事案である。 最高裁はまず、地方税法37条の2第2項について、関係規定の文理や総務大臣に委任の趣旨等の他、立法過程における議論を斟酌しても、指定制度の基準の策定を委任する授権の趣旨が明確に読み取れるということはできないと指摘。そうすると、募集適正基準等を定める告示2条3号の規定のうち、改正地方税法の施行前における寄附金の募集及び受領について定める部分は、地方税法37条の2第2項及び314条の7第2項の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるという判断を示した。 また、初年度に係る指定申出につき、泉佐野市が募集適正基準等を定める告示2条3号に該当しないことを理由(不指定理由②)に指定しないことはできないと指摘。さらに、現に同市が実施している寄附金の募集の取組みの状況に鑑み、法定返礼品基準に適合するとは認められないことを理由(不指定理由③)として指定しないことはできないとも指摘した。そうした判断から、原審(大阪高裁)の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があり、破棄を免れないと判示して、同市の請求を認容した。なお、この最高裁判決には、法定意見に賛意を示した上で、2人の裁判官が補足意見を寄せている。(2020.06.30最高裁第三小法廷判決、令和2年(行ヒ)第68号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2020.07.06 16:17:52