富裕層の海外資産 取引記録の保管も義務化へ 2020年度税制改正
富裕層が海外で所有している資産について、政府・与党は課税逃れ対策を強化する方針を決めた。銀行口座の預金の入出金や不動産の賃貸借について、取引記録を保管するよう要求。今のように資産残高だけでなく、預金に伴う利子や不動産の賃料、有価証券の配当や売却益など海外資産から生じた所得も把握しやすくする。12月にまとめる与党の税制改正大綱に盛り込み、2020年度の税制改正に反映する見通し。
現在の国外財産調書制度は、海外に合わせて5000万円を超える資産がある納税者を対象に、海外資産をどれくらい保有しているか毎年まとめて税務署に提出するよう義務づけている。新たな仕組みは、同じように計5000万円超の海外資産を持つ居住者を対象に、資産の取引実態が分かる入出金記録や帳簿を保管するよう促す内容になりそうだ。
あくまで義務化はしないが、国税当局の税務調査で申告漏れが発覚した場合に取引記録を提出すれば追徴課税の納税額が抑えられるため、国税庁は適切な申告につながりやすくなるとみている。約100の国と地域で昨年、金融機関にある外国人や外国企業の口座情報を交換する「CRS（共通報告基準）」が導入されており、新制度も活用して国際的な課税逃れを防ぐ。
海外資産の保有状況を調書で提出する納税者は年々増え続けている。国税庁によると、17年７月からの１年間では9551件、総額３兆6662億円分に上った。しかし実際は調書を提出しなかったり、運用に伴う所得を申告しなかったりするケースが多いとみられる。2015年には、近畿地方に在住していた韓国の大手銀行「新韓銀行」の株主が配当や譲渡益を日本で申告せず、計15億円の申告漏れを指摘されたこともあった。
提供元：エヌピー通信社
