財務省 ソフトバンクの節税策を規制へ M&Aで2兆円の赤字計上
財務省は企業の買収(M&A)に絡んだ節税の防止策を講じる方針を決めた。グループ内の資本取引で実態に変化がないのに大規模な赤字を意図的に捻出し、他の部門の黒字と相殺して法人税を減らしたソフトバンクグループ(SBG)の対応を「制度の抜け穴を突かれた」と受け止め、早急に動くことにした。与党の税制調査会を通してから、関連する改正法令を2020年度の税制改正大綱に盛り込む。
問題になっているのは、企業が子会社の中核事業を放出して企業価値が落ちた状態にしてから売却し、簿価と売却額の差を赤字として計上するシステムだ。SBGは16年に英アーム・ホールディングス(HD)を買収していたが、18年3月期にはその中核事業を担うアーム・リミテッドの株式の4分の3を、アームHDから配当という名目で譲り受けた。これにより価値が大きく落ちたアームHD株について、8割弱をソフトバンク・ビジョン・ファンドなどに売却させて2兆円を超える税務上の欠損金(赤字)を生み出し、他の事業による黒字分で穴埋めした。
結果としてアーム・リミテッドの親会社が移っただけで、SBGは法人税を納めずに済んだ。さらにこの欠損金は、今後もSBGに税務上のメリットがある。翌年度以降も10年間にわたって繰り越し、所得(黒字)から差し引いて税負担を軽くすることができるからだ。
国税庁はこうした取引自体は合法と認めるが、幹部は「事実上の脱税行為」と頭を抱える。国税庁から相談を受けた財務省は、SBGに追随する事案の再発を防ぐため、子会社の中核事業を手放す際に簿価も目減りさせる制度を設け、子会社を売却しても簿価と売却額の間で差がなくす方向で検討することにした。
提供元:エヌピー通信社