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株式譲渡は低額譲渡ではないと判示、納税者側が逆転勝訴

 取引相場のない株式の譲渡が低額譲渡に該当するか、また評価方法は配当還元方式が妥当か類似業種比準方式が妥当かの判断が争われた事件の控訴審で、東京高裁(都築政則裁判長)は原審の判決内容を否定、譲渡元は同族株主のいない会社に該当し、また譲渡先には同族関係者がいないことから配当還元方式による評価が妥当と判断、納税者側勝訴の逆転判決を言い渡した。

 この事件は、A社の代表取締役だった被相続人が所有していた取引相場のない株式をB社に譲渡したことを受け、相続によって被相続人の所得税の納付義務を承継した相続人らが、株式に係る譲渡所得の収入金額を配当還元方式に基づく譲渡対価と同じ金額で申告したところ、原処分庁が、譲渡対価が譲渡時の類似業種比準方式に基づく価額の2分の1未満だったことを理由に低額譲渡と判断、更正処分等をしてきたのが発端となった。

 そこで相続人側が、その取消しを求めて提訴したところ、原審が却下、棄却したため、これを不服とした相続人らが控訴、その取消しを求めたという事案である。

 控訴審はまず、所得税基本通達59-6の取扱いの趣旨に触れ、同族株主のいない会社に当たるかどうかの判定(つまり会社区分の判定)については、同通達の(1)により株式譲渡直前の議決権の数により行われるものと解されるとしても、課税時期における株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の15%未満である場合におけるその株主の取得した株式に該当するかどうかの判定(つまり株主区分の判定)は、その文言通り、株式の取得者の取得後の議決権割合により判定すべきと解するのが相当と判示した。

 その上で、譲渡元の株式は取引相場のない株式に当たり、かつ、同社には譲渡の直前に、議決権総数の30%以上の議決権を有する株主及び同族関係者が存在しておらず、同社は同族株主のいない会社に当たると認定。また、譲渡先の会社における株式取得後の議決権割合は7.88%で、同族関係者がおらず、議決権割合は譲渡元の会社の議決権総数の16%未満にとどまるとも認定した。

 その結果、譲渡元の会社の株式は、評価通達188の(3)の株式に該当するから、同通達59-6、評価通達188-2に従って配当還元方式によって評価すべきであると判示、原審の判決を否定するとともに、相続人側の主張を認容する逆転判決を言い渡した。

             (2018.07.19東京高裁判決、平成29年(行コ)第283号)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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 取引相場のない株式の譲渡が低額譲渡に該当するか、また評価方法は配当還元方式が妥当か類似業種比準方式が妥当かの判断が争われた事件の控訴審で、東京高裁(都築政則裁判長)は原審の判決内容を否定、譲渡元は同族株主のいない会社に該当し、また譲渡先には同族関係者がいないことから配当還元方式による評価が妥当と判断、納税者側勝訴の逆転判決を言い渡した。 この事件は、A社の代表取締役だった被相続人が所有していた取引相場のない株式をB社に譲渡したことを受け、相続によって被相続人の所得税の納付義務を承継した相続人らが、株式に係る譲渡所得の収入金額を配当還元方式に基づく譲渡対価と同じ金額で申告したところ、原処分庁が、譲渡対価が譲渡時の類似業種比準方式に基づく価額の2分の1未満だったことを理由に低額譲渡と判断、更正処分等をしてきたのが発端となった。 そこで相続人側が、その取消しを求めて提訴したところ、原審が却下、棄却したため、これを不服とした相続人らが控訴、その取消しを求めたという事案である。 控訴審はまず、所得税基本通達59-6の取扱いの趣旨に触れ、同族株主のいない会社に当たるかどうかの判定(つまり会社区分の判定)については、同通達の(1)により株式譲渡直前の議決権の数により行われるものと解されるとしても、課税時期における株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の15%未満である場合におけるその株主の取得した株式に該当するかどうかの判定(つまり株主区分の判定)は、その文言通り、株式の取得者の取得後の議決権割合により判定すべきと解するのが相当と判示した。 その上で、譲渡元の株式は取引相場のない株式に当たり、かつ、同社には譲渡の直前に、議決権総数の30%以上の議決権を有する株主及び同族関係者が存在しておらず、同社は同族株主のいない会社に当たると認定。また、譲渡先の会社における株式取得後の議決権割合は7.88%で、同族関係者がおらず、議決権割合は譲渡元の会社の議決権総数の16%未満にとどまるとも認定した。 その結果、譲渡元の会社の株式は、評価通達188の(3)の株式に該当するから、同通達59-6、評価通達188-2に従って配当還元方式によって評価すべきであると判示、原審の判決を否定するとともに、相続人側の主張を認容する逆転判決を言い渡した。             (2018.07.19東京高裁判決、平成29年(行コ)第283号)提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
2018.11.12 16:48:34