政府税調 存在感の低下あらわ 会長は弱気発言連発
首相の諮問機関で、税制について長期的・専門的な視点から議論する政府税制調査会が10月10日、今年度初の総会を開いた。高齢化社会を見据えて、老後に備えた資産形成を支援する税制のあり方についての議論に着手した。ただ、方向性をいつどうまとめるかについて、中里実会長(東大院法学政治学研究科教授)の歯切れは悪い。政府税調の地位低下をますます印象付けた。
政府は公的な年金の補完として長期投資による資産形成を勧め、少額投資非課税制度(NISA)、個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」など、優遇税制を設けている。ただ、複数の制度が並立して分かりづらい面があるため、制度を整理して使いやすい仕組みを検討する。
退職金にかかる所得税は、勤続20年を超えると所得から控除額が増える。転職が増えている現状にそぐわないとの指摘があり、見直す方針だ。
また高齢の親から高齢の子が財産を相続する「老老相続」が広がれば、生活にお金がかかる現役世代への資産移転が進みにくくなることも、政府は懸念している。相続税や贈与税を見直して現役世代への生前贈与を促す必要があるかも検討対象だ。
いずれも「骨太」なテーマばかりだが、中里会長は総会後の記者会見で、「方向性を示す時期は?」などの質問に「私の一存では決められない。委員とその都度相談しながら(になる)。無理はせずにできるところから順番に丁寧に」、「われわれが税制を決めるわけではない」とリーダーシップに欠ける弱々しい発言を連発した。政府関係者の話では、今年末の2019年度税制改正までに提言が出ることはなく、数年かかる見通しだという。
かつて、小泉政権に消費増税を強く迫った故・石弘光会長時代など、政治とは一定の距離を置いて「あるべき論」を唱えた政府税調の地位低下が指摘されて久しい。中里会長の相次ぐ弱気発言によって、その印象を強める船出となってしまった。
提供元:エヌピー通信社