感謝の集いと名付けられた行事費用は福利厚生費と判断、認容
従業員等に対する「感謝の集い」と名付けられた行事に係る費用が交際費等に該当するのか、福利厚生費に該当するのかの判断が争われた事件で福岡地裁(片山昭人裁判長)は、福利厚生事業として社会通念上一般的に行われている範囲を超えており、その行事に係る費用が社会通念上福利厚生費として認められる程度を超えているものと認めることは困難であると判断、法人側の主張を認容する判決を言い渡した。
この事件は、従業員等に対する感謝の集いと名付けられた行事に係る費用の一部及び工場内の下請企業の従業員に対して支給した表彰金に係る費用を損金に算入して法人税の確定申告をしたところ、原処分庁がいずれも交際費等に当たるという判断から損金算入を否認した上で、法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、法人側が原処分の取消しを求めて提訴したという事案である。
判決はまず、行事の目的が経営再建の原動力となった従業員に感謝の気持ちを伝えてその労苦に報いるとともに、従業員の労働力意欲を更に向上させ、従業員同士の一体感や会社に対する忠誠心を醸成させることにあったと考えられると指摘。また、従業員の慰安目的を達成するために、旅行先において従業員に提供される料理や食事の場所及び娯楽等の質ないし等級を上げるという形態を選択することも、社会通念上一般的に行われていることであると認定した。
さらに、従業員の行事への参加率が70%を超えており、業務の推移及び行事に対する従業員の受け止め方等によれば、行事は従業員の更なる労働意欲の向上、一体感や忠誠心の醸成等の目的を十分に達成しており、その成果が法人の業績にも反映されているとも認定した。
そうした検討結果から、感謝の集いと名付けられた行事が福利厚生事業として社会通念上一般的に行われている範囲を超えており、その行事に係る費用が社会通念上福利厚生費として認められる程度を超えているものと認めることは困難であるという判断を示した上で、租税特別措置法61条の4第1項が定める「交際費等」に該当すると判断することも困難であるとして、法人側の主張を認容する判決を言い渡した。
(2017.04.25福岡地裁判決、平成27年(行ウ)第15号)
提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)