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歯列矯正診療費の総収入金額に収入すべき時期は矯正装置の装着時と判断

 矯正歯科医院の歯列矯正治療費に係る事業所得の総収入金額に収入すべき時期及び課税資産の譲渡等の時期の判断が争われた事件で国税不服審判所は、歯科医院と患者との契約実態等を踏まえ歯列矯正装置の装着時とするのが相当であると判断した上で、審査請求人、原処分庁のいずれの主張も斥けたが、審判所認定額を上回る原処分認定額を取り消したため、結果的には一部取消しという裁決になった。

 この事件は、矯正歯科医院を営む請求人が所得税等及び消費税等の確定申告後、矯正診療費のうち未収の額を総収入金額に計上したのは誤りだったと判断して所得税等及び消費税等の更正の請求をしたところ、原処分庁が更正すべき理由がない旨の通知処分を行うとともに、矯正診療費の一部が総収入金額に計上されておらず、消費税の課税標準額にも含まれていないと判断した上で、所得税等及び消費税等の更正処分等をしてきたのが発端。そこで請求人側が通知処分の全部取消しを求めるとともに、所得税等については一部取消し、消費税等については全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 矯正診療費に係る事業所得の総収入金額に計上すべき時期及び課税資産の譲渡等の時期について、原処分庁側は矯正装置装着後に患者に交付される書面が患者に交付された時であり、矯正診療費に係る課税資産の譲渡等の時期も同様になると主張して、審査請求の棄却を求めた。一方、請求人側は、矯正装置の装着等は書面交付後に行われており、一括又は分割によって支払いを受けたそれぞれの日であると反論するとともに、矯正診療費に係る課税資産の譲渡等の時期も同様になるという主張を展開した。

 これに対して裁決は、歯列矯正治療は通常、数年の治療期間を要し、中核的な治療は矯正装置の装着であることに照らすと、患者との契約実態も踏まえて収入の原因となる権利の確定時期を決すべきであるものの、患者が矯正診療費の金額、予定治療期間、治療上の注意事項を承諾した後に矯正装置を装着していること、また矯正診療費が治療開始後の患者側の都合で返却されることはないことから、治療開始時期つまり矯正装置の装着時に矯正診療費の全額を請求する権利を有していると指摘した。

 その結果、矯正診療費の事業所得の総収入金額に収入すべき時期は矯正装置の装着時とするのが相当と判断して棄却した。ただ、原処分庁側の矯正診療費に係る収入すべき時期の認定に一部誤りを認め、結果的に一部取消しという裁決になった。

                  (2017.07.27国税不服審判所裁決)

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

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2018.07.05 18:27:06