相続税の期限後申告書の提出に正当な理由はないと判断、棄却
相続税の申告書が期限内に提出されなかったことに、国税通則法66条1項ただし書きが定める「正当な理由」があるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、法定申告期限までに相続財産の一部しか判明していなかったとはいえ、相続した土地の価額のみで基礎控除額を超えることを認識していたのであるから相続税の申告の必要性を認識していたと認定した上で、正当な理由があるとは認められないと判断、審査請求を棄却した。
この事件は、審査請求人らがした相続税の期限後申告に対して、原処分庁が無申告加算税の賦課決定処分をしてきたのが発端。そこで請求人らが、法定申告期限内に相続税の申告書を提出できなかったのは、法定申告期限までに被相続人が受け取るべき損害賠償金が確定しておらず、全ての相続財産を反映した相続税の申告書を作成することができなかったためであるから、国税通則法66条1項ただし書きが定める「正当な理由」があると主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。
裁決はまず、納税者が相続財産の全容を把握するために種々の調査を行い、情報入手の努力をした結果、法定申告期限までに相続財産の一部しか判明しなかったとしても、その判明した部分だけで遺産に係る基礎控除額を超える場合は判明した相続財産について期限内申告書を提出する必要があり、納税者が法定申告期限までに把握した相続財産の価額が遺産に係る基礎控除額を超えることによって相続税の申告書の提出を要すると認識し、又は認識し得た場合において、把握した相続財産に係る期限内申告書を提出しなかったときには、国税通則法が定める「正当な理由」があるとは認められないと解釈。
しかも、請求人らは、法定申告期限までに相続税の申告について相談した税理士から申告が必要である旨の説明を受けるとともに、相続した土地の価額のみで基礎控除額を超えることも認識していたのであるから、相続税の申告の必要性を認識していたとも認定した。その結果、請求人らが期限内申告書を提出しなかったことに、国税通則法が定める「正当な理由」があるとは認められないと判断、棄却した。
(2017.06.15国税不服審判所裁決)
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