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高所得者を狙い撃ち 税制改正法案が閣議決定

 政府は2月2日、2018年度税制改正の関連法案を閣議決定した。全体としては地方税を合わせて2714億円の増税となり、特に年収850万円を超える層への所得増税が目立つ。一般社団法人を使った相続税対策や小規模宅地の特例にも規制が加えられ、高所得者から取れるだけ取るという政府の姿勢が顕著に表れた形だ。

所得850万円超は増税

 所得税では、これまでは高所得者にも最220万円認められていた給与所得控除が縮小され、すべての人が適用できる基礎控除に所得制限が設けられる。
 従来の給与所得控除は、所得に応じて控除額が段階的に減っていき、年収1千万円を超えると上限の220万円で頭打ちになるというものだった。新たな制度ではすべての所得階層での控除額を一律10万円減額するとともに、頭打ちのラインを1千万円から850万円に、控除上限を220万円から195万円に縮小する。
 すべての人に適用される基礎控除の額は一律10万円引き上げて48万円とするが、こちらには新たに所得制限が導入されることとなる。合計所得が2400万円を超えると基礎控除が16万円減らされて32万円となり、2450万円を超えると16万円、2500万円を超えるとゼロになる。この見直しの結果、経営者として会社から給与を受け取り、かつ年収が2500万円超の人は、これまでより課税所得が単純に63万円増えることになった。
 さらに公的年金等控除でも高所得者の負担は増える。不動産収入など年金以外の所得が1000万円を超えるひとについては控除額が10万円減額され、2000万円を超えれば20万円が減額される。18年度改正には、まさに高所得者狙い撃ちといった見直しが並んだ。

一社の相続税対策が厳しく

 所得税での負担が増えるなかで、今後はより老後の資産プランや相続税対策が重要となってくるが、相続税でも高所得者層を締め付ける大きな2つの見直しがされている。
 1つ目は、一般社団法人などを使った相続税対策への規制だ。設立の容易な一般社団法人に関しては、親族で理事を固めて事実上の同族会社に資産を移す相続税対策が流行していたことから、①相続開始直前時点で、総役員数に占める同族役員数が2分の1を超えている法人、②相続開始前5年のうち3年以上で、総役員数に占める同族役員数が2分の1を超えている法人―を「特定一般社団法人等」と規定し、法人に譲渡された自社株についても相続税を課すとした。この同族役員には、被相続人や3親等内の親族だけでなく、被相続人が役員を務める会社の従業員なども含まれる。今後も一般社団法人を利用して相続税を回避するためには、過半数を外部の人間で固める必要があるが、「持分」のない一般社団法人では経営権の集中ができないため、外部の人間に過半数を占めさせるということは、将来的に家族以外の誰かに法人を乗っ取られるリスクを抱えることになる。
 2つ目は小規模宅地の特例で、親から宅地を相続する子が親と同居していなくても、持ち家がない時には相続評価減が適用される「家なき子」特例について、①相続開始前3年以内に、3親等以内の親族か関係のある法人が所有する家に住んでいたことのある人、②相続開始時に住んでいた家を、過去に所有していたことがある人―については、小規模宅地の特例が適用されなくなる。子がもともと持っていた自分の家を親族らに贈与した上で借り受け、形式上の「家なき子」となって特例を適用する手法を規制するものだ。

設備投資で固定資産税ゼロに?

 個人としての高所得者に厳しい見直しが並ぶ一方、中小企業の経営力強化を後押しするため、様々な面での税優遇が拡充されている。そのうちの一つとして、設備投資を後押しする新たな固定資産税の減税特例が導入される。これまでは中小企業等経営強化法に基づき、一定以上生産性の向上する設備投資について固定資産税を3年間半額にする措置があったが、これを廃止し、新たな制度によって固定資産税をゼロにまで減らせるようにする。
 新制度では、市町村が定めた基本計画に適合し、旧モデル比で生産性が年平均1%以上向上するなどの要件を満たす機械装置、工具、器具備品、建物附属設備などを対象に、固定資産税を3年間減免する。減免幅は自治体の裁量で、従来の2分の1からゼロまで変動させることができる。対象となる設備は、それぞれ1台が機械・装置であれば160万円、測定工具および検査工具、器具・備品であれば30万円、建物附属設備であれば60万円以上のものとなる。新制度の導入に伴い、すでにある経営強化法に基づく固定資産税の減免措置は廃止される。

提供元:エヌピー通信社

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2018.02.09 10:32:45