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固定資産税の過徴収 返還の時効は5年?20年? 横浜市「課税記録ない」

 複数のオフィスビルに対して誤った固定資産税評価の計算を行っていたとして、横浜市は1月25日、ビルの所有者らに対して計約8億8千万円を返還することを発表した。20年以上にわたって過徴収があったとしつつも、2005年度以前の課税記録が残ってないことを理由に返還するのは06年度からの12年分に限るという。
 ビルの固定資産税評価額は、構造が丈夫であればあるほど高くなる。今回過徴収があったオフィスビルは、鉄骨鉄筋コンクリート造と鉄骨造の複合構造だったが、市は全てを鉄骨鉄筋コンクリート造のみの評価基準で計算し、実際よりも高く課税していた。所有者の一人が評価方法について問い合わせたことで判明した。過徴収していた額は06年度から12年間で計約7億1千万円に上り、返還額は加算金を含めて計8億8千万円となる。
 ビルはいずれも20年以上前に建てられたもので、過徴収が06年度以前にも行われていた可能性は極めて高いが、市は「課税台帳が保存されておらず、税額を正確に把握できない」と05年度以前の過徴収分については返還しないことを決めた。
 過大に納めた税金の還付に関する時効規定は、地方税法18条の3にあり、原則的に「5年」と定められている。そのため、どれだけ長期間にわたる過徴収があっても、法的には5年分の返還しか自治体側には義務付けられていない。
 ただし5年の時効はあくまで通常の還付手続きなどを念頭に置いた規定で、自治体側の一方的なミスについては地方税法417条で「重大な錯誤があることを発見した場合においては、直ちに(中略)価格等を修正して、これを固定資産課税台帳に登録しなければならない」と特に明記されている。そのため、多くの自治体では「過徴収金返還要綱」と呼ばれるルールを定め、5年を超える過徴収についても返還する方針を採用している所がほとんどだ。要綱に規定する時効は自治体にもよるが、7年、10年、20年などまちまちで、近年多発している固定資産税の過徴収事例では、この要綱に従って返還期間を決めるケースが多いようだ。
 もちろん要綱を定めるかどうか、その要綱を適用の可否は自治体側の裁量なので、最低限の5年分しか返還しなくても法的に問題はない。ただし2010年に最高裁が、一定の条件下で固定資産税の過徴収分は国家賠償法の対象となるとの判決を下している。国家賠償法の時効に従うならば、20年分までは遡って返還を求めることができるわけだ。そのため、固定資産税の過徴収の返還に関する時効は、5年でもあり20 年でもあると言えるだろう。
 固定資産税は、自治体が税額を計算して納付書を交付するという「賦課課税方式」を採っている。納税者が税額の正当性を検証しようにも、その方法は極めて限られていて、自治体のミスは長期間放置されることがほとんどだ。全国で固定資産税の過徴収が多発し、しかも国家賠償法の定める時効20年を超えることが珍しくはない以上、納税者を救済するための新たな仕組みが求められていると言える。

提供元:エヌピー通信社

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11月15日更新

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 複数のオフィスビルに対して誤った固定資産税評価の計算を行っていたとして、横浜市は1月25日、ビルの所有者らに対して計約8億8千万円を返還することを発表した。20年以上にわたって過徴収があったとしつつも、2005年度以前の課税記録が残ってないことを理由に返還するのは06年度からの12年分に限るという。 ビルの固定資産税評価額は、構造が丈夫であればあるほど高くなる。今回過徴収があったオフィスビルは、鉄骨鉄筋コンクリート造と鉄骨造の複合構造だったが、市は全てを鉄骨鉄筋コンクリート造のみの評価基準で計算し、実際よりも高く課税していた。所有者の一人が評価方法について問い合わせたことで判明した。過徴収していた額は06年度から12年間で計約7億1千万円に上り、返還額は加算金を含めて計8億8千万円となる。 ビルはいずれも20年以上前に建てられたもので、過徴収が06年度以前にも行われていた可能性は極めて高いが、市は「課税台帳が保存されておらず、税額を正確に把握できない」と05年度以前の過徴収分については返還しないことを決めた。 過大に納めた税金の還付に関する時効規定は、地方税法18条の3にあり、原則的に「5年」と定められている。そのため、どれだけ長期間にわたる過徴収があっても、法的には5年分の返還しか自治体側には義務付けられていない。 ただし5年の時効はあくまで通常の還付手続きなどを念頭に置いた規定で、自治体側の一方的なミスについては地方税法417条で「重大な錯誤があることを発見した場合においては、直ちに(中略)価格等を修正して、これを固定資産課税台帳に登録しなければならない」と特に明記されている。そのため、多くの自治体では「過徴収金返還要綱」と呼ばれるルールを定め、5年を超える過徴収についても返還する方針を採用している所がほとんどだ。要綱に規定する時効は自治体にもよるが、7年、10年、20年などまちまちで、近年多発している固定資産税の過徴収事例では、この要綱に従って返還期間を決めるケースが多いようだ。 もちろん要綱を定めるかどうか、その要綱を適用の可否は自治体側の裁量なので、最低限の5年分しか返還しなくても法的に問題はない。ただし2010年に最高裁が、一定の条件下で固定資産税の過徴収分は国家賠償法の対象となるとの判決を下している。国家賠償法の時効に従うならば、20年分までは遡って返還を求めることができるわけだ。そのため、固定資産税の過徴収の返還に関する時効は、5年でもあり20 年でもあると言えるだろう。 固定資産税は、自治体が税額を計算して納付書を交付するという「賦課課税方式」を採っている。納税者が税額の正当性を検証しようにも、その方法は極めて限られていて、自治体のミスは長期間放置されることがほとんどだ。全国で固定資産税の過徴収が多発し、しかも国家賠償法の定める時効20年を超えることが珍しくはない以上、納税者を救済するための新たな仕組みが求められていると言える。提供元:エヌピー通信社
2018.02.02 09:40:25