管理・運用面から家族名義預貯金の相続財産への帰属を否定
被相続人の家族名義の預貯金が相続財産に帰属するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、相続財産と認定された家族名義の預貯金の一部は、その原資、管理及び運用等の実態から相続財産には当たらないと判断、原処分の一部を取り消した。
この事件は、原処分庁が相続税の申告の際に課税価格に算入されていなかった被相続人の家族名義の各預貯金は相続財産であり、また審査請求人らを契約者とした各生命保険契約等に関する権利も相続財産とみなされるという認定から相続税の更正処分等を行ってきたのが発端となった。
そこで請求人らが、相続財産と認定された各預貯金及び各生命保険契約等に関する権利は被相続人から贈与された資金等を原資としたものであり、相続財産には当たらないとして、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。
原処分庁側は、被相続人の子らに各預貯金を形成する資力があったとは認められず、また各預貯金等の管理及び運用は被相続人及び被相続人の配偶者が共同して行っていたと認められ、贈与があったという事実も認められないという判断から否認してきたわけだ。
しかし裁決は、幾つかの被相続人の子名義の各預貯金等の原資は、いずれも子名義の口座から引き出された金員を原資とする貯金の払戻金であると認定。そのうちの一つの名義口座においては公共料金等の支払等の入出金が大半を占め、その口座開設も子らが婚姻後早々にしたものであり、印鑑票の筆跡も子らのものであること、さらに生活費等の名目で受け取った金員は子らの一人が管理し、口座の通帳はその子らが管理していたなどの事実を認定した。
そうした事実関係から、一部の名義口座の預金はその子らに帰属し、預貯金等の出捐者が被相続人とは認められないとも指摘した。その結果、それらの名義預貯金等の出捐者が被相続人であるとは認められず、被相続人に帰属する財産であることを裏付ける事情や証拠資料も存しないから相続財産とは認められないと判断して原処分の一部を取り消した。ただし、生命保険契約等に関する権利に関する主張は斥けられている。
(国税不服審判所2016.11.08裁決)
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