税務調査において重要な「課税要件」とは
課税要件とは、納税義務を成立させるために必要な法律要件をいうものと考えられています。
また、この課税要件は、一般に、事実的要件と評価的要件(規範的要件)の2つに区分されると考えられています。
「事実」と「評価」との違いについて、実生活においてはその区別を意識することは少ないかもしれませんが、租税法解釈を含む法務の世界では、「事実」と「評価」とは峻別することが求められています。
ゴルフのドライバーの飛距離を例にすると、次のような表現の違いとなります。
上記のA氏に対する評価については、アマチュアゴルファーの間ではロングヒッターと評価されるかもしれませんが、プロゴルファーの中では普通の飛距離であり、ロングヒッターとは評価されないかもしれません。
事実は揺るぎないものですが、一方、評価は評価する場面や評価する人によってその評価内容は異なることがあります。
1 事実的要件
税法上の事実的要件には、例えば次のようなものがあります。
法人税法第23条は、受取配当の額は益金の額に算入しない旨規定し、また、法人税法第33条は、資産の評価換えをして帳簿価額を減額した部分の金額は損金の額に算入しない旨規定しています。
「受取配当の額」、「資産の評価換えをして帳簿価額を減額した部分の金額」(評価損)は、いずれも事実を述べたものであり、その事実に対しその効果を規定したものであり、事実的要件といえます。
このような事実的要件の税務判断においては、見解の相違が生じることはあまりないといえます。
2 評価的要件
一方、租税法に規定されている課税要件の中には、次のように、いわゆる「不確定概念」といわれているような曖昧概念や、「不確定概念」が用いられた評価的要件が課税要件とされているものが数多く見受けられます。
税法上の評価的要件には、例えば次のようなものがあります(太字筆者)。
⑴ 不当に減少
不確定概念を用いた典型といえる課税要件であり、「法人税の負担を不当に減少させる」いわゆる租税回避行為に対する否認規定であり、どのような場面で適用されるのか一義的に明らかとはいえず、実務者の間では「伝家の宝刀」ともいわれています。
この規定の歴史は古く、創設は大正12年に遡るものといわれています。
不確定概念が用いられている規定振りから、課税要件明確主義に反しているのではないかとの疑義が生じますが、過去の最高裁判決(最高裁昭和53年4月21日判決)において、課税要件明確主義に反するものではないと判示されています。
⑵ 不相当に高額
この規定も不確定概念を用いている典型といえる規定であり、「不相当に高額」の範囲は一義的に明確であるとはいえません。
このコンテンツの内容は、令和6年1月1日現在の法令等に基づいています。