金融機関の手数料に係るインボイス保存の緩和措置
リエ「黒田さんこんにちは。適格請求書の保存についてご相談してもよろしいですか。」
黒田「リエちゃんこんにちは。もちろんですよ。」
リエ「ありがとうございます。基本的に仕入税額控除を適用する取引は全て適格請求書または適格簡易請求書の保存が必要で、弊社に関係のある例外は3万円未満の公共交通機関の運賃、従業員等の出張旅費という認識でいます。また、3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入というのもありましたよね。」
黒田「一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除の要件を満たすものですね、古物商等の特別な事業に係わらないものだとその辺りでしょう。」
リエ「実際に適格請求書の保存を始めて思ったのですが、金融機関に支払う手数料関係の適格請求書が毎月かなりの枚数になります。一件当たり数百円程度ですが、都度支払うものですし、保存書類がかなりかさばっています。何とかならないでしょうか。」
黒田「その点については一定の緩和措置が設けられています。金融機関の入出金手数料や振込手数料に係る適格請求書の保存方法に関しては、多頻度にわたるという事情で全ての適格請求書(適格簡易請求書)の保存が困難な場合、金融機関ごとに発行を受けた通帳や入出金明細等(個々の課税資産の譲渡等(入出金サービス・振込サービス)に係る取引年月日や対価の額が判明するものに限ります。)と、その金融機関における任意の一取引(一の入出金又は振込み)に係る適格簡易請求書を併せて保存すれば、仕入税額控除が可能になります。」
リエ「そうなんですか。通帳だと窓口でもオンライン決済でも振込額と振込料をまとめて一行に記帳されてしまうこともあるので、結局一件ごとに入出金明細等は保管しないといけないですね。」
黒田「会計帳簿で振込料として仕入税額控除を適用した記録と、通帳や入出金明細等の記載内容が突合できる必要がありますね。ただし、オンライン決済で電磁的記録により適格簡易請求書が提供される場合には、当該手数料等の適格簡易請求書に係る電磁的記録がインターネットバンキング上で随時確認可能な状態であるなど一定の要件を満たすのであれば、必ずしも当該適格簡易請求書に係る電磁的記録をダウンロードせずとも、仕入税額控除の適用を受けることが可能です。」
リエ「それはかなり手間が省けると思います。」
黒田「注意点として、インターネットバンキングの閲覧が何年前まで遡れるか確認してください。法人税では確定申告書の提出期限の翌日から7年間、青色繰越欠損金が生じた事業年度においては10年間帳簿等を保管しなければならないので、同期間の取引が閲覧できないといけません。」
リエ「わかりました。確認して、遡れなくなる前にはダウンロードするようにします。」
黒田「そうしてください。もし、金融機関から各種手数料に係るお知らせ(適格請求書発行事業者の登録番号等、適格請求書の要件を満たす事項が記載されたもの)を受領している場合には、当該お知らせを保存することで適格簡易請求書の保存に代えることが可能です。」
リエ「そういえば、金融機関によってはパンフレットのようなものが置いてあり、都度の領収書等は適格請求書に対応しない、というところもありました。当初は横着だなと感じていましたが、始まってみるとそのほうが保存書類が減らせて助かりますね。」
黒田「実際に始まってみてわかったこともいろいろありますし、これから対応が変わっていく可能性もありますので、随時お知らせしていきますね。」
リエ「はい、よろしくお願いします。」