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中小同族会社の留保金制度とは

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Q、
わが社は、同族経営ですが、社長個人の所得税を少なくするため、利益があっても配当を行わずに「内部留保」しています。しかし、過度な内部留保は、租税回避につながるため、法人の「内部留保金」に課税する場合があると知人の社長に言われました。この課税を「特定同族会社の留保金課税」と言うそうですが、具体的な内容について教えて下さい。

A、
留保金課税制度は、特定同族会社の利益を留保することによる過剰な租税回避を防止するために制定されました。
同族会社の場合、利益が出ても、オーナー自身が株主として受け取る配当金に対する所得税の課税を免れるために、あえて配当をせず社内留保するなど、税負担の軽減を図ることが比較的容易です。
そこで、同族会社が所得のうち一定の金額を社内に留保したときは、通常の法人税とは別に、その留保金に対して特別に課税することとされています。
同族会社の中で、一定の条件を満たした法人は特定同族会社となり、留保金課税の対象とされます。特定同族会社であるために法人は資本金が1億円を超えていないといけません。以下、その判定についてです。

【特定同族会社】
資本金が1億円以下の場合は、資本金5億円以上の法人に完全支配されていれば資本金1億円超と同じとみなされ特定同族会社の対象会社としての条件を満たします。
さらに、特定同族会社であるためには、被支配会社であることが必要になります。

被支配会社とは、上位1グループが保有する株式が、対象法人の発行する株式総数の50%超である場合に、その対象会社は被支配会社ということになります。
さらに、被支配会社でない株主を除いて判定しても、対象法人が被支配会社であれば特定同族会社になります。株主法人が被支配会社かそうでないかを判定する必要があります。

留保金課税の対象となる法人は特定同族会社であり、その条件は、対象法人、株主の両方とも被支配会社でないといけません。被支配会社というのは第一順位の株主グループによって、発行済み株式総数の50%超が支配されている場合の支配されている会社のことを言います。

平成18年度の税制改正では、対象となる法人について、従前は「同族関係者3グループで株式等50%超保有の法人」としていたのを、「同族関係者1グループで株式等50%超保有の法人」のみに限定した上で、さらに内部留保に対する控除額を大幅に引き上げることにより、平均的な配当を行えば課税されなくなるという改が行われました。
さらに、平成19年度の税制改正では、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の「中小特定同族会社」については、内部留保課税の適用対象から除外されました。

執筆者情報

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執筆:一般社団法人租税調査研究会
監修:理事・主任研究員 米山英一 税理士

https://zeimusoudan.biz/

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Q、わが社は、同族経営ですが、社長個人の所得税を少なくするため、利益があっても配当を行わずに「内部留保」しています。しかし、過度な内部留保は、租税回避につながるため、法人の「内部留保金」に課税する場合があると知人の社長に言われました。この課税を「特定同族会社の留保金課税」と言うそうですが、具体的な内容について教えて下さい。A、留保金課税制度は、特定同族会社の利益を留保することによる過剰な租税回避を防止するために制定されました。同族会社の場合、利益が出ても、オーナー自身が株主として受け取る配当金に対する所得税の課税を免れるために、あえて配当をせず社内留保するなど、税負担の軽減を図ることが比較的容易です。そこで、同族会社が所得のうち一定の金額を社内に留保したときは、通常の法人税とは別に、その留保金に対して特別に課税することとされています。同族会社の中で、一定の条件を満たした法人は特定同族会社となり、留保金課税の対象とされます。特定同族会社であるために法人は資本金が1億円を超えていないといけません。以下、その判定についてです。【特定同族会社】資本金が1億円以下の場合は、資本金5億円以上の法人に完全支配されていれば資本金1億円超と同じとみなされ特定同族会社の対象会社としての条件を満たします。さらに、特定同族会社であるためには、被支配会社であることが必要になります。被支配会社とは、上位1グループが保有する株式が、対象法人の発行する株式総数の50%超である場合に、その対象会社は被支配会社ということになります。さらに、被支配会社でない株主を除いて判定しても、対象法人が被支配会社であれば特定同族会社になります。株主法人が被支配会社かそうでないかを判定する必要があります。留保金課税の対象となる法人は特定同族会社であり、その条件は、対象法人、株主の両方とも被支配会社でないといけません。被支配会社というのは第一順位の株主グループによって、発行済み株式総数の50%超が支配されている場合の支配されている会社のことを言います。平成18年度の税制改正では、対象となる法人について、従前は「同族関係者3グループで株式等50%超保有の法人」としていたのを、「同族関係者1グループで株式等50%超保有の法人」のみに限定した上で、さらに内部留保に対する控除額を大幅に引き上げることにより、平均的な配当を行えば課税されなくなるという改が行われました。さらに、平成19年度の税制改正では、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の「中小特定同族会社」については、内部留保課税の適用対象から除外されました。
2024.04.12 18:46:42