無償で不動産などの資産を移転させた場合の課税関係
リエ「黒田さんこんにちは。今日は無償で不動産などの資産を移転させた場合の課税関係について教えて頂けませんでしょうか? 無償で資産を移転させると税金の問題が生じるというのは良く分かるのですが、具体的にどのような課税関係が生じるのかいまいち整理できてなくて……。」
黒田「はい、もちろんです。(1)個人から個人(2)個人から法人(3)法人から個人(4)法人から法人の4つのケースに分けて整理したいと思います。まず個人から個人へ無償で資産を移転させた場合です。この場合は贈与税の問題ですね。無償で資産を譲り受けた個人にのみ贈与税が発生します。」
リエ「無償で個人が資産を譲り受けた場合には贈与税。これは感覚的に分かりやすいです。」
黒田「次に、個人から法人へ無償で資産が移転した場合です。資産を無償で移転させた個人は時価で譲渡をしたとみなされ譲渡所得課税が、資産を無償で譲り受けた法人は時価で譲り受けたとして受贈益が発生し法人税が課されます。」
リエ「資産を無償で譲り受けた法人に法人税が発生するのは分かるのですが、個人に譲渡所得課税が発生するのですか?」
黒田「はい。所得税法59条1項では贈与(法人に対するものに限る。)によって譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その時における価額に相当する金額によりこれらの資産の譲渡があったものとみなすと規定しています。いわゆるみなし譲渡です。これが根拠となり法人に無償で譲渡所得の起因となる資産を移転した場合、個人に譲渡所得課税が生じます。逆に法人から個人へ無償で資産を移転させた場合です。資産を無償で移転させた法人は時価で譲渡をしたとみなされ譲渡益に対して法人税が課されます。資産を無償で譲り受けた個人は譲り受けた資産の時価を給与所得又は一時所得として所得税が課されます」
リエ「個人から法人、法人から個人で課税関係が変わるのですね。」
黒田「はい、その通りです。少しややこしいですよね。最後に法人から法人へ無償で資産が移転した場合ですが、先ほどのケースと同様に資産を無償で移転させた法人は時価で譲渡をしたとみなされ譲渡益に法人税が課されます。一方で、無償で資産を譲り受けた法人は、時価で譲り受けたとみなされ受贈益に対して法人税が課されます。ただしグループ法人税制の適用がある場合には、譲渡益の繰延べや受贈益が益金不算入となるケースもあります。」
リエ「4つのケースに分けてそれぞれの課税関係を整理することが重要ですね。黒田さんありがとうございました。」