遠方で裁判が行われる場合の弁護士の選び方
争いの相手方が遠方の場合に、自分の近くの弁護士に相談すればいいのか、それとも相手方の居住地の近くの弁護士に相談すればいいのか、というお悩みを聞くことがよくあります。
調停や裁判の場合、管轄といって事件を取り扱うことのできる裁判所が法律によって定められており、例えば交通事故によって怪我をした場合に損害賠償請求をする場合には、被告の住所地(民事訴訟法4条)、原告の住所地(同法5条1号)、交通事故の発生した場所(不法行為地。同法5条9号)が管轄となりますし、遺産分割調停であれば相手方の住所地(家事事件手続法245条1項)が管轄となります。
もっとも、当事者同士での合意があれば、管轄と異なる裁判所での審理も可能です。
お住まいの地域から遠い場所で裁判や調停が行われる場合、弁護士やご本人の出頭が必要な場合には旅費や日当がかかってしまいますし、移動のための時間もかかります。そのため、初めに述べたようなお悩みが発生してしまいます。
私は、このようなお悩みをお持ちの方には、基本的には打合せをしやすい地域の弁護士に相談するほうがよいですよ、とアドバイスをしています。裁判や調停を行う場合には、依頼者ご本人からよくお話を聞かなければなりませんので、綿密な打ち合わせを行うことが重要です。オンラインでの面談に慣れている方であれば遠隔地の弁護士でもいいでしょうし、あまり慣れていない方や打合せは弁護士と直接会って行いたいという方であればお住まいの近くの弁護士のほうがよいかと思います。
もっとも、2020年から裁判のデジタル化が進められており、既に民事訴訟手続はウェブ会議により行われることもあり、一度も裁判所に出頭せずに裁判が終わることも多々あります。これまでも電話会議による手続は行われていましたが、一部の手続は出頭が必要であったり、裁判官や相手方の表情が見えないことがデメリットでした。
しかし、ウェブ会議であれば裁判所や相手方の表情を見ることができますし、今後は公開の法廷で行わなければならない手続(つまり、裁判所に出頭しなければならない手続)についてもウェブ会議で行われるようになります。
さらには、家庭裁判所での調停事件も、少しずつではありますがweb会議の方法によって行われつつあります。
特に家事調停については、遠隔地の裁判所に出頭しなければならない時間的・経済的な問題も去ることながら、当事者の方がDVを受けているような場合に相手方と顔を合わせてしまうリスクを軽減することができるのも大きなメリットです。
ウェブ会議の方法により裁判・調停が行われる際には、依頼者の方には弁護士の事務所に来ていただき、弁護士と一緒にウェブ会議に参加することになります。もちろん、相手方や裁判官(調停委員)の顔を見ながら手続を進めることができます。
裁判や調停でのウェブ会議の利用はまだ始まったばかりなので、これから運用方法などの変更があるかもしれませんが、当事者の方にとってはより裁判手続を利用しやすくなると思われます。
はじめの話に戻りますが、相手方が遠方に住んでいる、既に遠方の裁判所に訴訟提起されている、調停を申し立てられているという場合には、まず一度、お近くの弁護士に相談なさってはいかがでしょうか。