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出張旅費等に係るインボイス制度への対応は

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リエ「黒田さん、立替金のことで質問があるのですが、よろしいですか。」

黒田「大丈夫ですよ。」

リエ「ありがとうございます。弊社では取引先の経費を立替支払いすることがあります。インボイス制度のこともあって弊社の取引を見直していたのですが、そういえば立替払いの処理をあまり意識していなかったなと思いまして。」

黒田「では改めて立替払いの説明をしましょうか。まず、取引先が資産の譲渡や役務の提供を受けた場合、本来その対価は直接その取引先が支払うものです。そのため、本来取引先が負担すべき対価を御社で立替払いした際には、御社でその取引を立替払いとしてほかの取引と明確に区分していれば、御社において、その立替払いは課税仕入れに該当しませんし、立替金額の受取りも課税の対象となりません。ただし、立替金額にマージン料を上乗せして代金を受取る場合は、単なる立替えとは異なりますので、その全額が課税の対象となります。」

リエ「なるほど。では、立替払いについてインボイス制度が本格的に始まった際は、どのような対応をすればよいでしょうか。いまの時点で立替払いした際に受け取る請求書の相手先の名称は弊社になっているので、インボイス制度でこの請求書が適格請求書になったとして、それをそのまま取引先に交付しても、取引先は適格請求書の要件の一つである『書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称』が満たせないですよね。」

黒田「それについてですが、インボイス制度における立替払いの適格請求書に関しては、立替えを受けた側は、立替払いされた適格請求書と、立替払いを行った側が発行した『立替金精算書』といった、立替経費が立替えを受けた側の課税仕入れであることを証明する内容の書類を保存することで適格請求書の保存要件を満たすことになります。そのため、御社の対応としては、立替払いした際に受け取った適格請求書と御社が作成した立替金精算書等を一緒に取引先に交付するといった対応となります。そうすれば取引先はその立替えを受けた経費について仕入税額控除ができます。」

リエ「そうすればいいんですね。確認なのですが、立替払いした際に受け取った領収書などが適格請求書でなければ、立替金精算書等を発行した事業者が適格請求書の発行事業者だったとしても、立替えを受けた側は仕入税額控除できないんですよね。」

黒田「その通りです。逆に、立替金精算書等を交付した事業者が免税事業者でも、立替払いの領収書などが適格請求書であれば、立替えを受ける側は仕入税額控除できます。」

リエ「その立替払いした領収書などが適格請求書かどうかで判断するということですね。」

黒田「そうです。まあ、立替えを受ける側が消費税の計算方法として簡易課税制度やインボイス制度の2割特例を採用している場合であったり、免税事業者だった場合にはそもそも適格請求書の保存が不要なのですが、立替えを受ける側がどのような処理をしているかはこちらでは判断できませんので、立替払いをした際にはすべての方について、先ほどお伝えしたように書類を交付するほうが良いと思います。御社でも取引先に経費などの立替えをしていただいた際には、その適格請求書と立替金精算書等の交付を受けるようにしてくださいね。」

リエ「わかりました。ありがとうございます。」

監修

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税理士 坂部達夫

税理士法人坂部綜合会計/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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リエ「黒田さん、立替金のことで質問があるのですが、よろしいですか。」黒田「大丈夫ですよ。」リエ「ありがとうございます。弊社では取引先の経費を立替支払いすることがあります。インボイス制度のこともあって弊社の取引を見直していたのですが、そういえば立替払いの処理をあまり意識していなかったなと思いまして。」黒田「では改めて立替払いの説明をしましょうか。まず、取引先が資産の譲渡や役務の提供を受けた場合、本来その対価は直接その取引先が支払うものです。そのため、本来取引先が負担すべき対価を御社で立替払いした際には、御社でその取引を立替払いとしてほかの取引と明確に区分していれば、御社において、その立替払いは課税仕入れに該当しませんし、立替金額の受取りも課税の対象となりません。ただし、立替金額にマージン料を上乗せして代金を受取る場合は、単なる立替えとは異なりますので、その全額が課税の対象となります。」リエ「なるほど。では、立替払いについてインボイス制度が本格的に始まった際は、どのような対応をすればよいでしょうか。いまの時点で立替払いした際に受け取る請求書の相手先の名称は弊社になっているので、インボイス制度でこの請求書が適格請求書になったとして、それをそのまま取引先に交付しても、取引先は適格請求書の要件の一つである『書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称』が満たせないですよね。」黒田「それについてですが、インボイス制度における立替払いの適格請求書に関しては、立替えを受けた側は、立替払いされた適格請求書と、立替払いを行った側が発行した『立替金精算書』といった、立替経費が立替えを受けた側の課税仕入れであることを証明する内容の書類を保存することで適格請求書の保存要件を満たすことになります。そのため、御社の対応としては、立替払いした際に受け取った適格請求書と御社が作成した立替金精算書等を一緒に取引先に交付するといった対応となります。そうすれば取引先はその立替えを受けた経費について仕入税額控除ができます。」リエ「そうすればいいんですね。確認なのですが、立替払いした際に受け取った領収書などが適格請求書でなければ、立替金精算書等を発行した事業者が適格請求書の発行事業者だったとしても、立替えを受けた側は仕入税額控除できないんですよね。」黒田「その通りです。逆に、立替金精算書等を交付した事業者が免税事業者でも、立替払いの領収書などが適格請求書であれば、立替えを受ける側は仕入税額控除できます。」リエ「その立替払いした領収書などが適格請求書かどうかで判断するということですね。」黒田「そうです。まあ、立替えを受ける側が消費税の計算方法として簡易課税制度やインボイス制度の2割特例を採用している場合であったり、免税事業者だった場合にはそもそも適格請求書の保存が不要なのですが、立替えを受ける側がどのような処理をしているかはこちらでは判断できませんので、立替払いをした際にはすべての方について、先ほどお伝えしたように書類を交付するほうが良いと思います。御社でも取引先に経費などの立替えをしていただいた際には、その適格請求書と立替金精算書等の交付を受けるようにしてくださいね。」リエ「わかりました。ありがとうございます。」
2023.09.25 16:22:56