出張旅費等に係るインボイス制度への対応は
リエ「従業員に支給する旅費等について、インボイス制度開始後、どのように対応したらよいか教えてください。」
黒田「わかりました。」
リエ「従業員が出張等した場合の旅費や宿泊費について、基本的に実費で精算しているのですが、仕入税額控除の適用を受けるためにはどのような対応が必要でしょうか。」
黒田「会社が従業員等に対して支給する出張旅費、宿泊費、日当等で、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額や通勤に通常必要と認められる部分の通勤手当については、出張旅費等特例の適用により、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を適用することができますので、インボイスは不要です。出張旅費等について、その旅行に通常必要であると認められる部分とは、所得税が非課税となる範囲であり、所得税法基本通達9-3に基づき判定します。一方、通勤手当については、通勤に必要と認められるものであればよいとされ、所得税が非課税とされる金額の範囲内であるかどうかは問われません。」
リエ「そうなんですね。帳簿に記載する一定の事項とは、何を記載すれば良いのでしょうか。」
黒田「一定の事項とは、通常の記載事項である①相手方の氏名又は名称、②取引年月日、③取引の内容、④支払対価の額に加えて、出張旅費等特例の適用を受ける旨を記載することとされています。したがって、これらの事項を記載した精算書などを従業員に提出してもらい、帳簿に出張旅費等特例である旨を記載することで、インボイスの保管がなくても仕入税額控除の適用を受けることができます。」
リエ「なるほど。精算書は今までも従業員に提出してもらっていますので、出張旅費等特例である旨を帳簿に記載するようにすれば、仕入税額控除の適用を受けることができそうです。」
黒田「注意点としては、従業員等の出張に必要な乗車券等を会社が直接購入して従業員等に支給する場合や従業員等が法人のクレジットカードを利用して購入する場合には、出張旅費等特例の対象外となり、原則としてインボイスの保存が必要となります。ただし、電車やバスなどの公共交通機関による旅客の運送で、1回の取引が税込3万円未満の場合には、公共交通機関特例の適用により、帳簿のみの保存で仕入税額控除の適用を受けることができます。この場合の帳簿の記載事項は、通常の記載事項に加えて、公共交通機関の適用を受ける旨を記載することとされています。」
リエ「出張旅費等について、従業員に出張旅費等の金額を支給する場合と会社が直接購入して従業員等に支給する場合とで取扱いが異なるということですね。わかりました。ありがとうございます。」