企業にとってSDGsに取り組むメリット
これだけSDGsの認知度が上がった現在、企業、とりわけ中小企業にとってSDGsに取り組むメリットをお伝えすることは「何を今更⁉」と言った声が聞こえてきそうな気がしますが、改めまして企業を取り巻くSDGsの現状を振り返りつつ、今一度お伝えしたいと思います。
SDGsは中小企業にも浸透
アカデミックな話は先生方にお譲りするとして、私たち企業、とりわけ中小企業にとってSDGsは世界の問題、グローバルな問題、と捉えがちで、取り組みにブレーキがかかる傾向がありました。ところがウェブニュースを見てもテレビを見ても毎日のように「SDGs」の文字を見ない日はなく、大手新聞社も繰り返し大きなSDGsに関するイベントを開催してきました。
そしてあのカラフルなバッジの効果と相まって、当初「認知度が極めて低い」とされた中小企業にも浸透していったのです。
「SDGs宣言」は「終わり」ではなく「スタート」
中小企業にも認知度が上がったもう一つの理由として、取引先金融機関等が展開する「SDGs」宣言が挙げられます。
これは金融機関等が取引先の企業に対しSDGsに取り組む支援策として診断を行いSDGsに取り組むためのアドバイスをし、最終的にSDGsに取り組む企業に「SDGs宣言」をさせると言うものです。
全国的に「SDGs宣言」をする企業は増加しており、中小企業においても関心が高まったことを感じさせられます。
この「SDGs宣言」を軸にゴールの達成に向けて行動している企業は今後の活動に期待が寄せられる一方で、企業の中には「PRにつながれば良い」といった広告宣伝目的のみを主体に捉えている企業もあり、そのような企業では「SDGs宣言をしたら終わり」となってしまう傾向もあると聞きます。
また指導した金融機関もSDGs宣言をさせたら終わりで、その後のサポートやパートナーシップの取り組みが成されないといったケースもあるようです。
SDGsは「やること」「見せること」が目的ではなく、行動しゴールを達成することこそが目的であると言えます。「SDGs宣言」も宣言したら終わりではなく、そこからがスタートです。
「SDGs、SDGs!」と言っているのは日本人だけ⁉
そもそも「『SDGs』と繰り返し言っているのは日本人だけ」だと、スウェーデン人の友人やデンマークに住んでいた知人に言われました。
SDGsはSustainable Development Goalsのことです。
そもそも「SDGs をやる(ゴールをやる)」と言う日本語はおかしいと感じるでしょう。
この一件からゴールは目指すもの、達成すべきものなのだと気付かされました。
スウェーデンでは「Global Goals」と言われることの方が多いそうです。(この方が世界共通のゴールであると言うことを忘れないような気がしますね。)
SDGsは知っていているだけではもちろん、取り組んでいることを見せるだけではゴールには近づきません。
むしろ「見せること」に終始していれば、やっているかのように見せかける「SDGsウォッシュ(なりすまし)企業」と社会や顧客からも言われかねません。
だからこそ、その目的や意義について、今一度立ち止まって考えてみましょう。
中小企業が得られるSDGsに取り組むことによるメリット
現代社会では実に多くの課題があり、それら全てについてここで触れるわけには行きませんので割愛しますが、究極的には「持続可能な経営は平和、そして持続可能な地球が大前提である」と言うこと、そしてすべての問題は重なり合ったり繋がっているということだと私は考えています。
気候変動の問題も同様であり、平和や持続可能な社会を揺るがす根本的な大きな課題であり脅威でもあります。
私はSDGsにお取り組むことは、それら平和や持続可能な地球・社会の形成を目指すことにより「しあわせ」と言った、従業員さんも求めている社会共通の価値・共有価値を創り出していく意義があると感じています。
従業員さんへの効果
では、SDGs達成を目的に様々な課題に取り組むことによって、具体的にどのような効果があるのでしょうか。
私は間違いなく従業員さんの変化を第一に挙げます。
当初弊社の場合はSDGsが掲げられる以前、2004年頃からCSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)に取り組んできました。
その時CSRを「これからも地域や社会に必要とされる人と企業を目指す取り組み」と解釈し直し、であるならば「本業を通じて皆で地域や社会の課題を解決していこう」としたのがSDGsの始まりと言えます。
もちろん最初は従業員さんたちにその意義や目的がなかなか伝わらず、なかなかうまくいきませんでした。繰り返し伝わるまで伝え続ける姿勢を続けて、段々従業員さんたちにも変化が少しずつ出てきました。
やがて小さな会社でも世の中の課題解決に少しでも繋がることを行うことで、人から褒めて頂き、褒めて頂いた従業員さんは喜びを感じていきました。
そして褒めて頂けた従業員さんはまた次なる喜びを求めて、社会に良いことを行なっていきました。そのような活動を繰り返していると従業員さんの中から、自分自身が顧客や社会から必要とされていることを実感し、しあわせ感が増した、と言う人も出てくるようになりました。
女性活躍のきっかけに
私は従業員さん、とりわけ女性のエンパワメントについて効果があると感じています。
SDGsはゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」の中で女性のエンパワメントを図ることについて謳っています。
私共では恥ずかしながら女性活躍はとても遅れていた状況でした。
しかしSDGsにこの5番があることで勇気づけられた女性社員さんが手を挙げ、社内のジェンダー平等の活動に乗り出し、今も活動を続けてくれています。
そして少しずつ女性活躍の場が増え始めています。これは間違いなくSDGsに取り組む決して小さくない効果の一つであると言えます。
新規顧客の増加、粗利率の向上も
社内に多くのメリットを生み出してきたSDGsですが、対外的にも様々な効果が現れています。特に顕著なのは問い合わせ件数と新規取引先の増加です。
弊社の場合、脱炭素社会の推進を目的とした再生可能エネルギー100%「風と太陽で刷る印刷」が話題となり、お問い合わせを毎日絶えずいただけるようになりました。それに伴い新規お客様のお取引もコンスタントに増えており、2021年度90社、2022年度86社と順調に増えてきています。
また、新たな環境価値や社会的価値が伝わることにより、価格競争から抜け出すことができ始めており、粗利率の改善ができてきています。
改めてSDGsに取り組む際の注意ポイント
このようにメリットの多いSDGsに関する取り組みですが、最後に注意していきたいポイントについて触れたいと思います。
1.誰のため何のために取り組むのか?
企業としてどのような目的でSDGsのゴールの達成に向かうか?そのためには経営者が明確な意志を持っていなければなりません。安易に「PRになるから」「ビジネスのため」だけになると、次に述べる従業員さんの共感はなかなか得ることはできません。
2.「浸透」でなく「共有」「共感」「共鳴」
経営者は新しい取り組みをする時、どうしても「どのように社内浸透を図るか?」と考えがちです。そのため会社で取り組む目的について共感が得られないまま指示命令として進めてしまい、その結果従業員さんたちは「やらされ感」を持ってしまいます。「会社のために仕方なくやっていること」と化してしまうのです。
時間はかかりますが、まずは社会や世界の課題についての 情報を共有していき、その内容について共感してもらうこと。そして共感が深まり、更に共鳴してくれて初めて「このままではいけない、行動すべきである」と行動に起こしてくれると考えています。
3.経営者の生き方を示して伝え続けること。
持続可能な社会を目指すことについて、経営者自身がどのようにしていきたいのか?それは経営者のライフスタイルそのものに関係することです。
大袈裟なようですが、どのような生き方をしていきたいのかを示し、それを伝え続けることもとても大切なことだと考えています。
以上となりますが、皆様にとりまして少しでもSDGsの推進につなげられるヒントとなれば幸いです。益々のご活躍、ご繁栄を心からお祈り申し上げます。