SDGsをMAS監査に活かす
SDGsはVUCA(ブーカ)の時代の羅針盤
将来、歴史を振り返れば世界は、今、大きな転換点にあるかもしれません。
終息が見えないウクライナの戦争、米国の債務上限問題、気候変動による自然災害の増加、我が国の金利政策など、大きく変化する政治や経済情勢、まさに先が見えない時代とも言えます。また今年は、関東大震災から100年、「災害は忘れた頃にやって来る」ともいいます。
そして、こんな時代を表す言葉として、最近、「VUCAの時代」という言葉を耳にするようになってきました。
VUCAとは、元々は米国の軍事用語で、「Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取った造語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことを意味します。今、このVUCA時代の経営の羅針盤として、「SDGs・ESG」に取組みたいと考える経営者が増えてきています。
一方、我が国では、新型コロナの拡大により、多くの企業が自社業務を内省的に見るようになったと言われています。例えば、コロナ禍により半ば強制的に始まったテレワークですが、業務に支障が無い企業は拡大に舵を切り、その結果オフィス・スペースの削減や機能の見直しに止まらず、マネジメントや人事制度、サプライチェーン、本社の地方移転などの検討も始まっています。こういった内省的な思考の中、コロナ禍によって売上の減少や増加を受け、改めて自社の存在意義を考え、職場環境や組織体制、中期経営計画などの見直しの動きもあります。なかでも存在意義はビジネス文脈において、最近、「パーパス(Purpose)」という言葉で表され始めています。このパーパスを経営のど真ん中に置く経営を「パーパス経営」や「パーパスドリブン」と呼ぶこともあります。
パーパスを辞書で引けば「目的・意図」、「決意」という日本語訳が出てきますが、社会に対する企業の「志」という言葉にも換言できるのかもしれません。
VUCAの時代、中小企業の経営者はどんな舵取りをすべきかを悩んでいます。
中小企業経営者の身近な相談役は税理士です。税理士の中小企業経営者に対する積極的なアドバイザリー機能が期待されています。
SDGs×MAS監査×金融機関×人財
MAS監査(Management Advisory Service/マネジメント・アドバイザリー・サービス)は、税理士による未来志向の経営コンサルティングの一つです。
SDGsは、「あるべき姿」を置いて考える思考方法である「バックキャスティング」を採用しています。両者とも未来のあるべき姿を見据え、課題や取組みことを明確にしていきます。一方、ESG投資拡大の影響を受け、取引先である大企業や金融機関はSDGsの取組みには積極的です。中小企業の明るい未来を築くうえで、取引先や金融機関との関係構築は重要です。また若い人はSDGsには高い関心があります。これからの経営を支えるのは若い人財です。取引先、金融機関、人財採用の面でSDGsは共通言語と言えます。ぜひともMAS監査(Management Advisory Service/マネジメント・アドバイザリー・サービス)のツールとして、SDGsを活用して頂きたいと思います。
日本商工会議所が、独立行政法人中小企業基盤整備機構の「中小企業のSDGs 推進に関する実態調査」の結果を公表しています。
(令和4年3月14日公表)
この調査によれば、SDGsについて約90%の中小企業が認知しているものの、内容理解は約40%にとどまっています。SDGsの理解度と取り組み状況の関係を見ると、「十分理解している」、「やや理解している」と回答した企業では、「すでに取り組んでいる」、「今後は取り組んでいく予定」が58.4%となっています。
税理士にとって、SDGsは中小企業経営者と対話するうえでは、重要なテーマであり、MAS監査推進の面ではビジネスチャンスとも言えます。
現在、一般社団法人SDGs・ESG経営コンソーシアム(略称:BOAF/ボーフ)では、中小企業経営者向けにSDGs経営やカーボンニュートラルに取り組む税理士会員を募集しています。
ご関心のある方はホームページでご確認いただけますと幸いです。
一般社団法人SDGs・ESG経営コンソーシアム 理事
株式会社ふるサポ 代表取締役 中島達朗