インボイス制度の令和5年度改正点
インボイス制度令和5年度改正
あゆみ:インボイスの登録申請って今月(3月)末が締め切り?
ケン:10月1日からインボイス発行事業者としての登録を受ける場合の登録申請はそういうことになっていましたが、今年の改正で4月以降の申請でも10月1日から発行事業者になれますよ、ということになりました。
具体的には、登録を受けようとする課税期間の初日の15日前までに登録申請書を提出すればその課税期間からインボイス発行事業者として登録を受けることができます。
あゆみ:今年の改正って、ほかにも何か変わったことがあるの?
ケン:スムーズにインボイス制度が導入されることを目的として、
① 免税事業者だった事業者がインボイス発行事業者に登録した場合に、納税額は売上の消費税額の2割という特例
② 中小事業者の1万円未満の少額取引については、インボイスの保存がなくても帳簿の保存のみで仕入税額控除が可能
③ 1万円以下の少額な値引き返品は、インボイスの交付免除
④ インボイス導入にあたり、補助金上乗せ
の点について改正案が発表されました。
免税事業者だったインボイス発行事業者の消費税の納税
あゆみ:外注先さんもインボイス登録したら納税が大変って言っていたわ。
ケン:今回の改正で、2期前(2年前)の売上が1,000万円以下の事業者で、インボイス制度がなければ免税事業者だった事業者のうち、インボイス発行事業者として登録した事業者の消費税の納税額は、売上の消費税の2割を納めればよいという措置が取られました。
あゆみ:それは期限があるの?
ケン:はい、令和5年10月1日から令和8年分の申告までが対象です。
あゆみ:普通に計算した方が納税額は少なくなる、となった場合にはどうなるの?
ケン:その時は、普通に計算した方法で納税額を算出していただいて構いません。
この特例は届出も特に必要なく、申告時に選択できることとなっていますので、一番納税額が少なる方法を選択できることになります。
ですから、簡易課税選択届出書を提出していたとしても、この特例の方が納税額は少なくなる場合であっても、簡易課税選択不適用届出書の提出も不要です。
あゆみ:じゃ、この2割だけ納税の方法を選択した場合には、手続きは不要なの?
ケン:はい、事前の届出は必要ありません。
消費税の確定申告書に2割特例の適用を受ける旨を付記するだけで適用を受けることができます。
あゆみ:この特例って、1回1回選択が可能なの?
ケン:申告の都度、適用を受けるか受けないかの選択が可能です。
ただし、適用できるのはインボイス発行事業者に登録しなければ免税事業者となる期間に限られますので、例えば、令和6年分の課税売上が1,000万円を超えた場合には令和8年分の申告については、この2割特例を受けることはできません。
また、令和5年9月30日までに課税事業者選択届出書を提出し課税事業者となった場合には、2年前の課税売上が1,000万円を超えていなくても令和5年分については2割適用を受けることができません。
中小事業者の少額取引のインボイス保存不要の特例
あゆみ:私の会社も1万円未満のインボイスは保存しなくていいの?
ケン:適用対象事業者は2年前の消費税の課税売上高が1億円以下または前事業年度開始の6か月間の課税売上高が5千万円以下の事業者です。
したがって、社長の会社は適用できます。
1万円未満の取引については、インボイスの保存は不要ですが、帳簿の保存は必要ですので、ご注意ください。
あゆみ:この特例は、ずっと適用できるの?
ケン:この特例は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間です。
令和11年10月1日からは、少額取引のインボイスも保存が必要になります。
あゆみ:少額の1万円って、税込みなの?税抜きなの?
ケン:税込みで判断します。
あゆみ:この1万円は、個数でもいいの?例えば9,000円のもの2個買ったら「少額」になるの?
ケン:これは個数ではなく、取引ごとに判断します。
つまり、1つの請求書、領収書の金額が1万円を超えるかどうかです。
少額な値引き・返品のインボイス交付免除
あゆみ:1万円未満の値引き・返品はインボイスがいらないってこと?
ケン;おっしゃる通りです。
値引き・返品、販売奨励金などは原則返還インボイスの交付が必要ですが、1万円未満の値引き・返品、販売奨励金などは返還インボイスの交付が必要ありません。
この1万円も「税込み」で判断しますが、これは、振込手数料を値引き処理する場合も返還インボイスが不要です。
あゆみ:この規定はずっとあるの?
ケン:これは期限なく恒久的に適用できます。
あゆみ:振込手数料を値引き処理するときもインボイスが必要なのかなって思っていたわ。
ケン:売り手が振込手数料を値引き処理する場合にも適用できます。
あゆみ:この振込手数料を「支払手数料」として処理した場合にはどうなるの?
ケン:この場合には、支払手数料として処理した取引の課税区分を「課税仕入」ではなく、「売上に係る対価の返還等」としていれば、インボイスの交付は必要なくなります。
補助金の上乗せ
あゆみ:さっき、補助金が上乗せされるって言っていたけど、どんな補助金?
ケン:持続化補助金とIT導入補助金(デジタル化基盤導入型)です。
両方とも、これから支払うものに対し、事業計画を作成して申請し、承認を受けられると補助金を受け取ることができます。
持続化補助金は、税理士相談費用や機械装置導入、広報費といった費用に対し、補助率2/3または4/3で100万円から250万円までを上限としたものですが、免税事業者がインボイス発行事業者に登録した場合には、補助上限額が50万円上乗せされます。
IT導入補助金は、ソフトウェアやハードウェアの購入、クラウド利用料金などに対し、補助率1/2から3/4で10万円から350万円を上限としたものですが、ITツールを購入した時の下限50万円が撤廃され、会計ソフト購入についても補助金の対象となりました。
あゆみ:どっちも申請したいけど、事業計画が必要なのね。面倒ね。
ケン;もし、申請されるならお手伝いいたします。費用はいただきますが(笑)。
あゆみ:ほらまた、商売うまいわね。
ケン:いえいえ、私は純粋に社長のお手伝いをさせていただければということですから(笑)。