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インボイス制度における消費税額の計算方法

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リエ「インボイス制度が導入された場合、消費税の計算方法に見直しはあるんでしょうか。」

黒田「はい。インボイス制度の下で消費税の計算方法が見直され、適用ルールが変更されました。消費税は、売上税額から仕入税額を控除して消費税額を計算されます。現行制度の下では、売上税額や仕入税額は、原則として割戻し計算により算出しますが、特例として積上げ計算も認められています。インボイス制度導入後は、売上税額の計算方法ついては、原則として割戻し計算、インボイス発行事業者は特例として積上げ計算又は割戻し計算と積上げ計算を併用する方法により算出することができます。一方、仕入税額の計算方法ついては、原則として積上げ計算、特例として割戻し計算により算出することができ、さらに、積上げ計算には、原則であるインボイス積上げ計算と特例である帳簿積上げ計算の2つの方法があり、この2つの計算方法を併用することも認められています。」

リエ「仕入税額の計算方法は積上げ計算が原則とされるんですね。インボイス制度の下での割戻し計算と積上げ計算の計算方法について、教えてください。」

黒田「わかりました。まず、売上税額の計算方法のうち、割戻し計算は、税率ごとに区分した課税期間中の課税売上げの税込金額の合計額に110分の100又は108分の100を掛けて計算した課税標準額に7.8%又は6.24%を掛けて売上税額を算出し、また、積上げ計算は、インボイスに記載した税率ごとの消費税額の合計額に100分の78を掛けて売上税額を算出します。次に、仕入税額の積上げ計算のうち、インボイス積上げ計算は、インボイスに記載された消費税額のうち課税仕入れに係る部分の金額の合計額に100分の78を掛けて仕入税額を算出し、もう1つの計算方法である帳簿積上げ計算は、税抜経理による場合、課税仕入れの都度、帳簿に計上された仮払消費税額等の金額の合計額に100分の78を掛けて仕入税額を算出します。このインボイス積上げ計算と帳簿積上げ計算は併用して適用することも可能です。また、仕入税額の割戻し計算は、税率ごとに区分した課税期間中の課税仕入れに係る税込金額の合計額に110分の7.8又は108分の6.24を掛けて仕入税額を算出します。」

リエ「売上税額と仕入税額のそれぞれの計算方法は、自由に組み合わせて適用することができるのでしょうか。」

黒田「インボイス制度の下では、売上税額と仕入税額の計算方法の適用について、ルールが設けられています。売上税額の計算方法を割戻し計算による場合には、仕入税額の計算方法は割戻し計算と積上げ計算のいずれかの方法により計算することとなります。一方、売上税額の計算方法を積上げ計算又は割戻し計算と積上げ計算を併用する方法による場合には、仕入税額の計算方法は積上げ計算によらなければなりません。」

リエ「なるほど。そういえば、免税事業者からの課税仕入れについては経過措置の適用がありますが、その場合の仕入税額の計算はどうなるのでしょうか。」

黒田「免税事業者からの課税仕入れに係る経過措置を適用する場合の仕入税額の計算は、まず、割戻し計算による場合、税率ごとに区分した課税期間中の課税仕入れに係る金額の合計額に110分の7.8又は108分の6.24を掛けて算出した金額に、令和5年10月1日から令和8年9月30日までは100分の80、令和8年10月1日から令和11年9月30日までは100分の50を掛けて仕入税額を算出します。次に、積上げ計算の場合、経過措置の適用を受ける課税仕入れの都度、その課税仕入れに係る金額に110分の7.8又は108分の6.24を掛けて算出した金額に、令和5年10月1日から令和8年9月30日までは100分の80、令和8年10月1日から令和11年9月30日までは100分の50を掛けて仕入税額を算出します。なお、この積上げ計算による場合の処理は、経過措置の適用を受ける課税仕入れを区分して管理し、期末等のタイミングで処理することも認められていますが、その場合でも経過措置の適用を受ける課税仕入れごとに計算することとなりますので注意が必要です。」

リエ「積上げ計算の場合、期末等にその処理を行うとしても、経過措置の適用を受ける課税仕入れに係る金額の合計額をもとに仕入税額を算出するのではなく、経過措置の適用を受ける課税仕入れごとに仕入税額の算出する必要があるということですね。」

黒田「そのようになります。」

リエ「わかりました。ありがとうございました。」

監修

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税理士 坂部達夫

税理士法人坂部綜合会計/(株)アサヒ・ビジネスセンター

 東京都墨田区にて平成元年に開業して以来、税務コンサルを中心に問題解決型の税理士事務所であることを心がけて参りました。
 おかげさまで弊所は30周年を迎えることができました。今後もお客様とのご縁を大切にし、人に寄り添う税務に取り組んでいきます。

メールマガジンやセミナー開催を通じて、様々な情報を発信しています。

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リエ「インボイス制度が導入された場合、消費税の計算方法に見直しはあるんでしょうか。」黒田「はい。インボイス制度の下で消費税の計算方法が見直され、適用ルールが変更されました。消費税は、売上税額から仕入税額を控除して消費税額を計算されます。現行制度の下では、売上税額や仕入税額は、原則として割戻し計算により算出しますが、特例として積上げ計算も認められています。インボイス制度導入後は、売上税額の計算方法ついては、原則として割戻し計算、インボイス発行事業者は特例として積上げ計算又は割戻し計算と積上げ計算を併用する方法により算出することができます。一方、仕入税額の計算方法ついては、原則として積上げ計算、特例として割戻し計算により算出することができ、さらに、積上げ計算には、原則であるインボイス積上げ計算と特例である帳簿積上げ計算の2つの方法があり、この2つの計算方法を併用することも認められています。」リエ「仕入税額の計算方法は積上げ計算が原則とされるんですね。インボイス制度の下での割戻し計算と積上げ計算の計算方法について、教えてください。」黒田「わかりました。まず、売上税額の計算方法のうち、割戻し計算は、税率ごとに区分した課税期間中の課税売上げの税込金額の合計額に110分の100又は108分の100を掛けて計算した課税標準額に7.8%又は6.24%を掛けて売上税額を算出し、また、積上げ計算は、インボイスに記載した税率ごとの消費税額の合計額に100分の78を掛けて売上税額を算出します。次に、仕入税額の積上げ計算のうち、インボイス積上げ計算は、インボイスに記載された消費税額のうち課税仕入れに係る部分の金額の合計額に100分の78を掛けて仕入税額を算出し、もう1つの計算方法である帳簿積上げ計算は、税抜経理による場合、課税仕入れの都度、帳簿に計上された仮払消費税額等の金額の合計額に100分の78を掛けて仕入税額を算出します。このインボイス積上げ計算と帳簿積上げ計算は併用して適用することも可能です。また、仕入税額の割戻し計算は、税率ごとに区分した課税期間中の課税仕入れに係る税込金額の合計額に110分の7.8又は108分の6.24を掛けて仕入税額を算出します。」リエ「売上税額と仕入税額のそれぞれの計算方法は、自由に組み合わせて適用することができるのでしょうか。」黒田「インボイス制度の下では、売上税額と仕入税額の計算方法の適用について、ルールが設けられています。売上税額の計算方法を割戻し計算による場合には、仕入税額の計算方法は割戻し計算と積上げ計算のいずれかの方法により計算することとなります。一方、売上税額の計算方法を積上げ計算又は割戻し計算と積上げ計算を併用する方法による場合には、仕入税額の計算方法は積上げ計算によらなければなりません。」リエ「なるほど。そういえば、免税事業者からの課税仕入れについては経過措置の適用がありますが、その場合の仕入税額の計算はどうなるのでしょうか。」黒田「免税事業者からの課税仕入れに係る経過措置を適用する場合の仕入税額の計算は、まず、割戻し計算による場合、税率ごとに区分した課税期間中の課税仕入れに係る金額の合計額に110分の7.8又は108分の6.24を掛けて算出した金額に、令和5年10月1日から令和8年9月30日までは100分の80、令和8年10月1日から令和11年9月30日までは100分の50を掛けて仕入税額を算出します。次に、積上げ計算の場合、経過措置の適用を受ける課税仕入れの都度、その課税仕入れに係る金額に110分の7.8又は108分の6.24を掛けて算出した金額に、令和5年10月1日から令和8年9月30日までは100分の80、令和8年10月1日から令和11年9月30日までは100分の50を掛けて仕入税額を算出します。なお、この積上げ計算による場合の処理は、経過措置の適用を受ける課税仕入れを区分して管理し、期末等のタイミングで処理することも認められていますが、その場合でも経過措置の適用を受ける課税仕入れごとに計算することとなりますので注意が必要です。」リエ「積上げ計算の場合、期末等にその処理を行うとしても、経過措置の適用を受ける課税仕入れに係る金額の合計額をもとに仕入税額を算出するのではなく、経過措置の適用を受ける課税仕入れごとに仕入税額の算出する必要があるということですね。」黒田「そのようになります。」リエ「わかりました。ありがとうございました。」
2023.01.23 15:57:08