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「適用除外要件としての2ヶ月要件の改正」②

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すべての事業所、すべての労働者についての共通のルールである「適用除外要件としての2ヶ月要件」の改正の具体的内容を踏まえたうえで、短時間労働者の加入要件の一つである雇用期間要件の改正との関係性を見ていくこととします。

あらためて改正前後の整理

改正前後の内容を整理すると、下表のとおりとなります。

 

改正前

改正後

A】短時間労働者の雇用期間要件

雇用期間が継続して1年以上見込まれること

(廃止)

B】すべての労働者の適用除外要件

二月以内の期間を定めて使用される者

二月以内の期間を定めて使用される者であって、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないもの

短時間労働者の加入要件である「雇用期間が継続して1年以上見込まれること」が廃止されることにより、短時間労働者の加入要件としては雇用期間要件がなくなります【A】。しかし、【B】はもともとすべての労働者の適用除外要件であるため、下表のように整理する方がわかりやすいと思います。

 

改正前

改正後

A】短時間労働者の雇用期間要件

雇用期間が継続して1年以上見込まれること

二月以内の期間を定めて使用される者であって、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないもの

このあたりの改正内容をどう伝えるのかは非常に難しく、厚生労働省・日本年金機構が出している各種資料は、その性格によって表現方法が異なっているため、戸惑うことがあります。この点については、改めて最後に取り上げます。
それでは、以上の改正内容が、企業規模ごとにどのような影響を受けるのかをそれぞれ見ていきたいと思います。

従業員規模100人以下の場合

引き続き、短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の適用は適用除外のままですので、改正【A】については考慮する必要はありません(任意特定適用事業所を除く)。ただし、改正【B】については当然対象となってきますので、契約更新を前提に最初の契約期間を2か月とし、更新した2回目の契約の時点から社会保険に加入させていた場合は、当初の契約の時点から加入するように運用の変更が必要となります。
なお、任意特定適用事業所とは、現行の制度下では義務化されていない従業員規模500人以下の事業所のうち、労使合意に基づき短時間労働者にかかる適用拡大の申出をした事業所のことです。

従業員規模101人以上500人以下の場合

10月1日から特定適用事業所となり、短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の適用が拡大される企業規模です。改正【B】については、従業員規模100人以下の場合と同様です。改正【A】については、改正前の1年要件について考慮する必要はなく、改正後の2ヶ月要件をあてはめればよいということになります。

従業員規模501人以上の場合(任意特定適用事業所の場合を含む)

改正【B】については、他の従業員規模の場合と同様です。
改正【A】については、まず現行の「雇用期間が継続して1年以上見込まれること」が意味するところをあらためて確認しておきましょう。すなわち、当初は雇用期間が1年以上見込まれなかったが、その後見込まれることとなった場合は、見込まれることとなった時点から被保険者の資格を取得するということになっています。
そうすると、例えば、令和4年7月1日から6ヶ月契約で契約更新をしない前提のため、被保険者となっていなかった方はどうなるのかという問題が出てきます。
『短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集』(以下「Q&A」という)は、このようなケースについて、施行日(=令和4年10月1日)を資格取得日として資格取得届を提出する必要があるという解釈を示しています(問36)。

公的なリーフレットなどの確認

最後に、厚生労働省・日本年金機構のリーフレット等の資料の書きぶりを確認しておきましょう。
まずQ&Aは、問2では「5要件」が「4要件」になるとしか書かれておらず、問35まで読み進めて初めて、4要件のほかに2ヶ月要件も見る、という説明の仕方になっています。こうして読んでみると、Q&Aは拾い読みをすると誤解が生じるおそれがあり、通して読むことが想定されているようです。決して全体として内容が誤っているわけではなく、法律の改正の内容としてはまったく正しいのですが、必ずしもわかりやすさを目指しているわけではないため、こうなるのだろうという感じがします。
リーフレット『厚生年金保険・健康保険の被保険者資格の勤務期間要件の取扱いが変更になります』では、下段の(2)にこれらのことが簡潔にまとめられています。勤務要件が撤廃されたうえで、一般の被保険者と同様、2ヶ月要件が適用されることとなったというような表現となっています。
一方、『令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大』という日本年金機構のサイトを読むと、短時間労働者の雇用期間要件が廃止されたというようなまわりくどい表現はされていません。
それぞれの資料において、何を主眼として伝えたいかによって、このように表現が変わってくるのだろうということを読み取ることができます。

執筆者情報

加藤 正紀

社会保険労務士法人法改正研究所

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2022.08.24 15:55:33