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土地の取得に伴う諸費用と取得価額

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<法人税の取扱上のポイント>

(1)土地の取得に伴っては土地本体の買取価額の他に各種の附随的支出が発生する。
(2)法人税の取扱上はこれらの支出のうち「当該資産の取得のために要した費用」及び「当該資産を事業の用に供するために直接要した費用」に該当するものは支出時の損金ではなく、土地の取得価額に算入する必要があるものとされている。
(3)しかし土地の取得に伴って支出される費用は多岐にわたるため、「取得のために要した費用」及び「当該資産を事業の用に供するために直接要した費用」に当たるかどうかが必ずしも判然としないケースが少なくない。
(4)本稿では土地の取得に関連して発生する各種の支出について、それぞれの支出ごとに法令及び通達を基に取得価額に算入すべきものと、支出時の損金に算入することができるものの区分について解説し参考に供する。

1 土地の取得価額に係る法人税法の基本的考え方

 固定資産を含むところの資産一般の取得価額については、他から購入した場合の代価部分のみに限らず、取得のために要した一定の附随費用も含まれるものとされている。
 固定資産の取得のために要した費用として当該資産の取得価額に加算すべきものの範囲に関する法令上の規定としては建物や機械装置などの減価償却資産の取得価格について規定している法人税法施行令54条(以下「法令54条」という。)の規定があるが、同じ固定資産である非減価償却資産に属するところの「土地」ついては明文の規定はない。
 しかし、減価償却資産と同じ固定資産に属する土地については、法令54条の規定が準用されるというのが課税庁の基本的な解釈であり、これについては法人税基本通達の7-3-16の2において「減価償却資産以外の固定資産の取得価額については、別に定めるもののほか、令第54条⦅減価償却資産の取得価額⦆の規定及びこれに関する取扱いの例による」旨が明らかにされている。
 法令54条は、他から購入した減価償却資産の取得価額については「当該資産の購入のための代価、取引運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税、その他当該資産の購入のために要した費用および当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額」と規定している。
 したがって、土地の取得に伴って発生する各種の費用については、この法令54条の規定及びこの規定に関する法人税基本通達などに基づいて判断する必要があることになる。

2 各費用ごとの検討

(1)不動産業者に支払う仲介手数料

 一般に土地取得のために仲介に当った不動産業者に支払う「仲介手数料」は法令54条の規定中の「……当該資産の購入のために要した費用」に該当するものとして土地の取得価額に算入する必要があることになる。

(2)登録免許税及び不動産取得税等

 不動産取得税や登録免許税については、その支出が法令54条に規定するところの「……その他当該資産の購入に要した費用」に当たるかどうかの問題となる。これらの租税公課の性格は、当該土地を取得するための費用というよりは、むしろ、取得したことに伴って事後的に課されるものに当たると認められことから、取得価格に算入する必要はなく支出時の損金に算入することができるものとされている。
不動産取得税をはじめとする租税公課やその他の費用のうち下記に掲げるものについては法人税基本通達(以下「法基通」という。) 7-3-3の2において「……たとえ固定資産の取得に関連して支出するものであっても、これを固定資産の取得価額に算入しないことができる。」ものとする取扱い基準が示されている。
・不動産取得税又は自動車取得税
・特別土地保有税のうち土地の取得に対して課されるもの
・新増設に係る事業所税
・登録免許税その他登記のために要する費用
・建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建物計画を変更したことにより不要となったものに係る費用の額
・一旦締結した固定資産の取得に関する契約を解除して他の固定資産を取得することとした場合に支出する違約金の額

(3)建物賃借人に支払う立退料

 法基通7-3-5は「法人が土地、建物等の取得に際し、当該土地、建物等の使用者等に支払う立退料その他立退きのために要した金額は、当該土地、建物等の取得価額に算入する」ものとしている。したがって賃借人を立退かせるための「立退料」あるいは「立退保証料」及び「和解金」などは、土地の取得価額に加算すべきものとなる。
 なお、立退き交渉に当たって支払われる弁護士報酬なども「……その他当該資産の購入に要した費用」に当たるものとして土地の取得価格に算入する必要があるものと思われる。

(4)建物の取壊し費用

 建物等の存する土地を建物等とともに取得した場合、もともとその建物等は利用する意思がなく、例えばこれを取り壊し新たな工場建屋を建設する意図のもとに購入されたことが明らかであれば、欲しいのはその土地ということになる。このため建物等の取得価額と取壊費はいずれも土地の取得価額に算入しなければならないことになる。法基通7-3-6は(注参照)この様なケースを想定し、この建物等を直ちに取り壊した場合のほか、取得後おおむね1年以内に取壊しに着手するなどの事実があれば、その土地を利用するために建物等を取得したものとする取扱い基準が示されている。
(参考)
(土地とともに取得した建物等の取壊費等)
7-3-6 法人が建物等の存する土地(借地権を含む。以下7-3-6において同じ。)を建物等とともに取得した場合又は自己の有する土地の上に存する借地人の建物等を取得した場合において、その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手する等、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取壊しの時における帳簿価額及び取壊費用の合計額(廃材等の処分によって得た金額がある場合は、当該金額を控除した金額)は、当該土地の取得価額に算入する。

(5)不動産譲受時の固定資産税分担金の取扱い

 土地及び建物の取得に際して、売主が既に支払った固定資産税について、買主に引き渡した日以降に係る分を負担額として買主に請求する慣行がある。
 本来、固定資産税の納税義務者は、その年の1月1日現在で固定資産課税台帳に所有者として登録されている者(売主)が納税義務者になる。
 しかし、買主が支払う固定資産税相当額の負担は、上記(2)に掲げられている租税公課とは異なり事後費用といえないこと、売主が負担すべき費用という面から売主にとっては原価を構成するものであり、譲渡価額を決定する際に反映されるべきものであると考えられる。
 したがって、不動産譲受時の固定資産税の分担金として負担した固定資産税相当額は、土地及び建物の取得価額に含めることになり、租税公課として損金の額に算入することはできないことになる。

(6)土地についてした防壁、石垣積み等の費用

 既に埋立て、地盛り等土地の造成又は改良がなされた土地を取得した場合には、当然その造成又は改良のために要した費用は購入代価に含まれていることから、その造成又は改良に要した費用はその土地の取得価額に算入されているということができる。そこで、土地を取得してこれに造成又は改良をした場合には、造成または改良済みの土地を取得した場合との権衝上、その造成又は改良に要した費用は全てその土地の取得価額に含まなければならないことになる。つまり、土地を取得した後造成又は改良のために要した費用は、その土地を事業の用に供するために直接要する費用に該当することから取得価額に算入されることになる。
 このように、埋立て、地盛り、地ならし、切土、防壁工事その他の造成又は改良に要した費用は、原則としてその土地の取得価額に算入することになるが、その規模、構造等からみて土地と区分して構築物とすることが適当と認められるものの費用は、構築物の取得価額とすることができることとされている。また、上下水道はもともと土地とは独立した固定資産として減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一にも特掲されていることから、これを他の造成工事費として構築物とすることも認められている(法基通7-3-4)。
(注) 地質検査、地盤強化、地盛り、特殊な切土等が専ら建物や構築物等の建設を目的として行われた場合には、これらに要した費用はその建物又は構築物等の取得価額に算入される(法基通7-3-4(注))。

(7)土地の取得に伴って支出する地方公共団体等に対する寄附金

 都道府県又は市町村から土地等を取得した場合において、その取得に関連して都道府県又は市町村に寄附金等を支出しても、単純に指定寄附金となるのではなく、例えば、寄附金を支出することが条件とされているため著しく低い価額で土地等を購入できた等、その支出した金額が実質的にみてその土地等の代価を構成すべきものであると認められるときは、その支出した金額を取得価額に算入しなければならないことになる(法基通7-3-3)。

(8)埋蔵文化財の発掘費用

 法人が工場用地の造成その他宅地開発を行う場合に、その造成途中においてその土地の文化財が埋蔵されていることが明らかになったときは、文化財保護法等の規定によりその法人の負担によってその埋蔵文化財の発掘調査を行うことが義務付けられている。
 このような宅地造成に伴って支出した費用は、その宅地造成のために不可避的な費用であることから、その土地の造成原価として取得価額に算入すべきものと考えられるが、一方では、その発掘費用の支出は、本来その土地の造成とは直接関係ないとも考えられる。そこで、その発掘調査等をするために要した費用の額は、土地の取得価額に算入しないで、その支出時の損金の額に算入することが認められている(法基通7-3-11の4)。
 ただし、文化財の埋蔵されている土地をその事情を考慮して通常の価額より低い価額で取得したと認められる場合には、その発掘調査等のために要した費用の額はその土地の取得価額に算入される。

(9)借地権の取得価額

 法人が有する借地権は、法人税の課税上は土地に含めて取り扱われるのが通例である(例えば、法2二十二、令12、法50)。
 法人が取得した借地権は、当然に資産として計上しなければならないが、その取得価額には次のような金額が含まれる(法基通7-3-8)。
ア 土地の賃貸借契約又は転貸借契約(以下「借地契約」という。)に当たり支払った借地権利金の額
イ 借地契約の更新及び更改に当たり支払った更新料及び更改料の額
ウ 土地の上に存する建物等の購入代金のうち借地権の対価と認められる金額
エ 賃借した土地の改良のための地盛り、地ならし、埋立て等の整地に要した費用の額
オ 借地契約に当たり支出した手数料等の額
カ 建物等を増改築するに当たりその土地の所有者等に支出した金額



執筆者情報

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税理士 小畑 孝雄

昭和41年東京国税局入局、国税庁法人税課、国税不服審判所勤務等を経て平成16年東京国税局法人課税課長、18年同調査第2部長を歴任し19年退官、税理士登録(日本橋支部所属)

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(1)土地の取得に伴っては土地本体の買取価額の他に各種の附随的支出が発生する。(2)法人税の取扱上はこれらの支出のうち「当該資産の取得のために要した費用」及び「当該資産を事業の用に供するために直接要した費用」に該当するものは支出時の損金ではなく、土地の取得価額に算入する必要があるものとされている。(3)しかし土地の取得に伴って支出される費用は多岐にわたるため、「取得のために要した費用」及び「当該資産を事業の用に供するために直接要した費用」に当たるかどうかが必ずしも判然としないケースが少なくない。(4)本稿では土地の取得に関連して発生する各種の支出について、それぞれの支出ごとに法令及び通達を基に取得価額に算入すべきものと、支出時の損金に算入することができるものの区分について解説し参考に供する。
2022.06.24 17:11:20