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税務調査と調査官の職歴(追加編)

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Q、「税務調査と調査官の職歴」で紹介されていた以外で、国税職員の職格・業務内容で覚えておいた方がよいものを教えてください。

A、今回も10年職歴の見方を参考に、調査官の職格・職歴と業務内容を説明します。

①調査部

 10年職歴に調二調7調官と記載されていれば、東京国税局・調査第二部・調査7部門・調査官のことです。
 国税局の調査部は、主に資本金1億円以上の大企業の調査を担当しています。大企業では中小企業よりも複雑な取引や会計が行われていることが多く、高い調査能力が求められるため、税務署の調査官のうち優秀な者が選ばれて勤務しています。
 税務職員は、国税局を「本店」と呼ぶことから、国税局に勤務することを「本店勤務」とも言います。
 一度でも国税局に勤務できるのは税務職員全体の3~4割ほどであり、過去に調査部に所属していれば、出世株のエリート調査官ということになります。

②特別調査部門(特調)

 10年職歴に新宿法13上席と記載されていれば、新宿税務署・法人課税第13部門・上席調査官のことです。
 過去に不正な会計処理を行っている、税務調査に非協力的である等の理由から調査が困難な事案や、反面調査(取引先に対する調査)・銀行取引の照会などを行う必要があり、長期間を要する事案などを担当するのが特別調査部門です。比較的大規模な税務署に設置されており、以前は、東京国税局では一番大きい番号の部門が特調でしたが、現在は筆頭部門内にあります。
 特調はその調査能力の高さから、国税局内の精鋭部隊「資料調査課(料調)」の税務署版として「ミニ料調」とも呼ばれています。

③事務系統

 税務職員は基本的に退職まで同じ事務系統(税目や分野のことで、俗に、「背番号」と呼びます)を担当しますが、「転課」や「交流」として違う税目等を担当する場合もあります。
 一方、転課をせず、同じ税目を長年担当してきている場合、その税目のベテラン調査官ということになります。

④特一署

 「特一署」は一般的に規模が大きく、複雑な経済取引の多い都市部を管轄しているため、高度な調査経験が豊富な調査官が多いようです。

(例)東京国税局管内

千葉東・麹町・神田・日本橋・京橋・芝・麻布・品川・四谷・新宿・東京上野・渋谷・豊島・板橋・練馬東・江戸川北・八王子・立川・横浜中・川崎北

⑤審理係

 国税局において国税の訴訟に関する事務を担当する「国税訟務官」や、税務署において税務調査結果の審理・法令の適用・訴訟に関する事務を行う。
 「審理専門官」など、審理や訴訟を担当する職員は税法のスペシャリストです。審理系を歴任している調査官は、税法の規定に忠実で厳格な調査を行います。

⑥情報技術専門官

 10年職歴に、技情技官と記載があれば、情報技術専門官のことです。企業のパソコンやサーバーのデータ解析を専門とする部署です。
 帳簿上は記載されていない隠された取引を調べるなど、企業のIT化の進展により、税務調査においてもIT技術が重要になっています。消去されたデータの復元なども行っており、調査官となってもその知識は強い武器となっています。

⑦再任用者

 国家公務員には、定年等で退職した職員を再び任用する「再任用制度」があります。国税組織においては、退職後に税務署の調査官・徴収官として再任用されるケースが多いですが、肩書は「国税調査官」です。
 ベテランである上席調査官ではないからと油断していると、税務調査の当日になって、前年まで統括官だった経験豊富な調査官が来てビックリすることもあります。
統括官、上席などから調査官への異動は、再任用の可能性大です。

⑧交流

 現在税務署の法人課税部門にいて、過去も税務署が違うだけで、ずっと法人経験者でない経歴を持っている調査官には注意です。
 国税内は交流といって、3年程度、他部門に異動し、経験を積ませる慣習があります。担当の税法すら全くわかっていないケースが多いので、税法で反論するのでなく、書籍などで反論した方がわかりやすくて効果的です。

⑨転課

 交流とは違い、完全に部門を移籍することがあります。交流のように担当税目を全く知らないことはないかと思いますが、経験が浅い場合は交流者と同じ対応をした方がいい場合があります。

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執筆者情報

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執筆:一般社団法人租税調査研究会
監修:理事・主任研究員 米山英一 税理士

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