DX会計事務所の作り方 その4 「業務のDX・・・業務プロセスのデジタル化」
中小企業DX推進研究会ではDX会計事務所になるためのステップとして5つの工程を提唱しています。今回は、ステップ4 「業務のDX」 について解説していきます。
【会計事務所の業務改革】
一般的な事務所においては各職員がそれぞれ個別に割り当てられた担当の顧問先に対して、サービスを提供しています。顧問先ごとに会計処理の方法が異なるため、それぞれの特性を理解している各担当者が、顧問先に合わせてサービス提供の方法を変えているということも少なくありません。データ入力業務を補助者が担当するなどして部分的に分業制をとる場合もありますが、基本的には一人の担当者が資料の回収から会計処理、試算表等の資料作成及び決算業務までを担当することが一般的です。
このように一人の担当者が最初から最後まで一通りの業務を行う形をとってしまうと、次のような問題が発生しやすくなります。
①業務が属人化してしまいブラックボックス化する
②担当者一人が対応する業務の種類が多く、技術の習得に時間がかかる
③進捗管理や品質管理などを組織的に行うことができない
小規模な組織であればこのような体制であってもあまり問題が発生しませんが、従業員が増えれば増えるほど、マネジメントにおけるリスクが増大します。 「ムリ・ムダ・ムラ」 を発見することも難しいため、生産性を向上させるための取り組みも難しくなります。このような問題を解決するためには業務プロセスの再構築 (Business Process Reengineering : BPR) を行い、組織的な分業体制をつくることが有効です。
【BPRのフレームワーク】
業務プロセスを再構築するには、「分業」 と 「標準化」 という二つの視点が欠かせません。個人が行っている業務を分解したうえで、共通するものを一つにまとめて新たな業務として定義し直すことで、業務を分割することができます。その際、不要な作業を除いたり手続きを統一する 「標準化」 を行うことで、業務の無駄を省くことができます。
参考になるフレームワークとして、ECRS(イクルス)の原則があります。次の四つの視点で業務の見直しを行うことで、無駄の少ないプロセスを構築することができます。
①排除 (Eliminate)
業務をなくすことができないか?
②結合 (Combine)
業務を一つにまとめられないか?
③交換 (Rearrange)
業務の順序や場所などを入れ替えることで、効率が向上しないか?
④簡素化 (Simplify)
業務をより単純にできないか?
【業務プロセスのマネジメント】
各業務の範囲とそのプロセスが明確に定義された状態がつくられると、ITツールを用いて各業務から得られるさまざまなデータを収集することで、プロセス全体をマネジメントすることが可能になります。これらのデータを生産性や品質、進捗管理のKPI (Key Performance Indicator) として利用し、PDCAサイクルによってその向上を図るマネジメント手法をビジネスプロセスマネジメント (Business Process Management : BPM) といいます。BPMにおいては、業務プロセスの可視化とKPIのモニタリングをどのように行うかがポイントとなります。会計事務所においては、kintone® や FLOW といった業務管理ツールの存在が、このようなマネジメントをサポートするツールとして活用されています。自社の業務プロセスの定義とこれらのツールを活用することで、KPIの取得と業務可視化を効率よく行うことができるようになります。このような体制づくりは、DXにおけるデータドリブンの概念にもつながり、事業環境変化への柔軟な対応や、イノベーションにおけるアジャイルな検証を行う 「下地」 となることでしょう。