人材確保等促進税制の適用
リエ「今期(令和4年3月期)からは、継続雇用者給与等支給額の比較要件がなくなりましたのでだいぶ楽になりますが、決算前に所得拡大促進税制適用の可否を判断するために資料の準備を考えています。」
黒田「先日、来期対象の令和4年度税制改正による賃上げ促進税制(所得拡大促進税制の拡充)についてお話したばかりでしたね。」
リエ「はい。今期は、最大税額控除額が増額される前の適用になりますが、適用要件はそれほど変わっていませんでしたね。雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額と比べて1.5%以上増加していた場合にその増加額の15%相当額を法人税額又は所得税額から控除でき、要件を満たせば最大25%の税額控除(法人税や所得税額の20%相当額が上限)を受けられる制度でしたよね。」
黒田「今期は、人材確保等促進税制も考慮しなければならないかもしれません。」
リエ「人材確保等促進税制とは、どのような制度なのでしょうか。」
黒田「人材確保等促進税制は、令和3年度の税制改正で創設された制度ですが、令和4年度税制改正により改正されたため令和3年4月1日から令和4年3月31日までの間に開始する事業年度のみ適用できる制度になります。適用対象は、青色申告書を提出する全企業とされており、前期比で雇用者給与等支給額が増加していることに加え、新規雇用者給与等支給額(国内新規雇用者のうち雇用保険の一般被保険者を対象とし、雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額)と新規雇用者比較給与等支給額(前年度の新規雇用者給与等支給額)を比較し2%以上増加している場合で、適用年度の国内新規雇用者に対して1年以内に支給した給与等支給額の15%相当額(雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額を上限とする)が法人税額又は所得税額から控除可能となります。」
リエ「中小企業等に限らず適用できる制度なのですね。この制度も上乗せ要件があるのでしょうか。」
黒田「はい。教育訓練費が前年と比較して20%以上増加していた場合には、増加した新規雇用者給与等支給額の5%の上乗せ(法人税や所得税額の20%相当額が上限)があります。」
リエ「所得拡大促進税制と人材確保等促進税制は併用可能なのでしょうか。」
黒田「どちらかの制度の選択適用となっています。前提となる適用要件が異なるため、所得拡大促進税制が適用出来ない場合でも人材確保等促進税制は適用できる可能性がありますので注意しなければなりません。」
リエ「いずれにしても時間には余裕を持って作業を行わなければいけませんね。」