インボイス制度導入後は振込手数料の処理に注意!
リエ「売上代金から差引きされている振込手数料ですが、インボイス制度が導入される令和5年10月1日以降注意しけなければならない点はありますか。」
黒田「国税庁のインボイスQ&Aや週間税務通信にも取り上げられていますが、実務的には売手側が負担しているケースも多い振込手数料の処理に関して気を付けていただきたい点があります。」
リエ「どのような内容でしょうか。」
黒田「本来、買手が負担することとされている振込手数料ですが、振込手数料を差し引いた金額で振り込まれた場合、支払手数料等で処理しているケースも多いと思われます。」
リエ「数社でそのような処理を行っています。送付されてくる請求書でも一定金額以下の取引だった場合には、手数料の負担をお願いします、と注書きされているものを目にしたことがありますね。」
黒田「現行の制度では、3万円未満の取引については、帳簿の保存があれば消費税の仕入税額控除ができるため請求書等を保存していない会社も多いようですが、令和5年10月1日以降は、帳簿のみの保存による仕入税額控除は原則として認められなくなります。また、請求書等の交付を受けなかったことにやむを得ない理由がある場合に認められる『帳簿のみ保存』の特例も廃止となるため、売手側の処理によって適格請求書等の保存が必要になります。」
リエ「どうすれば良いのでしょうか。」
黒田「売手が負担している振込手数料を金融機関から振込サービスの提供を受けていると考えた場合、買手は売手の負担すべき振込手数料を立て替えたと考えることができます。決済時に立替金の精算がなされたと考え、売手側は買手が金融機関から受領した振込サービスに係る適格請求書と立替金の精算書の交付を受領することで仕入税額控除が行えるようになります。」
リエ「売手は、毎月書類の発行を依頼しなければならないのですか。」
黒田「もうひとつ、売上の値引きが行われたと考える場合も想定されます。この場合には、買手から書類を取得する手間を省くことができます。」
リエ「手続きを考えた場合には、後者を選択する会社が多いでしょうね。」
黒田「ただ、値引きを行ったという適格返還請求書を交付する必要があります。適格返還請求書は、振込みが行われた都度交付する必要はなく、月単位等一定期間の取引をまとめて発行することができるとされています。」
リエ「売上値引きで処理を行うのであれば、消費税の軽減税率が適用されている事業者は消費税率を誤らないように注意しなければなりませんよね。」
黒田「そうですね。どちらにしても担当者の事務負担が生じることになりそうです。制度が始まる前に会社としての方針を検討しておかなければならないと思います。」
リエ「わかりました。ありがとうございます。」