株式等保有特定会社の株式評価
旭課長「黒田さん。ちょっといいですか?」
黒田「はい。何でしょう?」
旭課長「以前、複数の会社を経営している取引先の社長が、今後の事業承継を念頭に置いて今から株式等保有特定会社から外れるように対策をとらなければと仰っていたのですが、どういうことでしょうか?」
黒田「おそらくその社長は持株会社を設立していて、その持株会社の株式評価額が高くなってしまうので低く抑えたいのだと思います。」
リエ「持株会社とはどういう会社ですか?」
黒田「持株会社とは自らは事業を行わず、グループ会社の株式を保有し、グループ全体を管理・統括する会社です。ですから、持株会社の収益というのはグループ会社からの配当金になります。」
リエ「持株会社のメリットはどういうものですか?」
黒田「グループ全体を統括しているので、各会社の強み・弱みを判断し、グループ全体の利益につながる経営判断がスピーディーに行えます。それに事業承継においても、複数の会社の株式を一つひとつ移す必要がなく、持株会社の株式を移すだけで事業承継が行えます。」
旭課長「株式等保有特定会社とはどういう会社ですか?」
黒田「取引相場のない株式を評価する場合、従業員数や取引規模に応じて会社規模を勘案して、類似業種比準価額も考慮して評価します。しかし、持株会社のように株式を大量に保有している会社は一般的な会社と同じ評価方法は用いるべきではないという理由で原則、純資産価額方式での評価になります*。会社の総資産のうち50%以上が株式等で占められている会社を株式等保有特定会社と言います。」
*S1(株式等以外の部分の価額)+S2(株式等に相当する部分の価額)方式も認められています。
リエ「一般的には純資産価額方式で評価したほうが高くなる傾向がありますものね。その株式等保有特定会社から外れるにはどうしたらいいのですか?」
黒田「株式等保有特定会社の判定の基礎となる株式等とは、株式、出資及び新株予約権付社債のことを指します。例えば、証券会社が保有する商品としての株式や外国株式、株式制のゴルフ会員権は株式等に該当します。一方、匿名組合の出資や証券投資信託の受益証券は株式等には該当しません。つまり、株式等に該当しない資産を保有し、株式保有割合を50%未満にすればいいのです。俗にいう「株特外し」ですね。しかし、課税時期前に合理的な理由もなく資産構成に変動があり、それが株式等保有特定会社の判定を免れるためと認められた場合は、その変動はなかったものとされますので注意が必要です。」
リエ「ありがとうございました。」