令和4年からの電子取引を行った場合の電子データでの保存について
電子取引を行った場合には電子データでの保存が必須となります。
あゆみ:この前、電子帳簿保存の話をしたときに、電子取引については書類での保存が出来なくなって、データでの保存が必要だって話していたでしょ。それって電子帳簿保存を選択した事業者だけ?それとも、私の会社もそうしなきゃいけないの?
ケン:電子取引を行った場合には、所得税、法人税を申告する全事業者が対象ですので、あゆみ社長の会社も対象となります。
あゆみ:それっていつから?
ケン:令和4年1月1日からです。つまり、来年の1月からという事ですね。
あゆみ:うちは12月決算だからちょうどいいわ。
ケン:ちなみに3月決算など、事業年度の中途であっても令和4年1月1日からは電子取引に係る電子データは電子データでの保存が求められます。
電子取引とは?
あゆみ:何をしたら電子データで保存しなきゃいけないの?
ケン:「電子取引」とは請求書や領収書を電磁的記録により行うものとして、次のものが該当します。
①電子メールにより請求書や領収書を受け取った
②インターネットのホームページから請求書や領収書をダウンロードした
③電子による請求書や領収書のやり取りについて、クラウドサービスを利用した
④クレジットカードや交通IC系カード等の利用明細データを活用したクラウドサービスを利用した
⑤特定の取引についてEDIシステムを利用した
⑥ペーパーレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用した
⑦請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受け取った
あゆみ:そんなにあるんだ。
電子データ保存の要件
あゆみ:電子データを保存するには要件があったわよね?
ケン:はい、その通りです。
保存の要件として、次の4つのうち1つを行わなければなりません。
①先方でタイムスタンプが付されたものの授受
②当方で速やかにタイムスタンプを付す
③データの訂正、削除を行った場合に、その記録が残るシステムを利用
④訂正削除の防止に関する事務処理規定の備え付け
他に、電子データを見ることができるパソコンとディスプレイの備え付けや検索機能の確保も必要です。
あゆみ:となると、何かしらのシステムを導入しなきゃいけないの?
ケン:必ずシステムを導入しなければならないわけではありません。
訂正削除防止の事務処理規定を設けていれば、システムを導入しなくてもいいこととなっています。
あゆみ:事務処理規定ってどう策定すればいいの?
ケン:基本的に、訂正や削除をしてはならないこととそのデータの管理者を設置することが求められます。
国税庁ホームページに「電子取引データの訂正および削除の防止に関する事務処理規定」のひな型が掲載(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdf、P14)されていますので、ご参考にされるとよろしいと思います。
また、社長の会社は当てはまりませんが、前々期(個人事業者は前々年)の売上が1,000万円以下の事業者については、検索機能の確保の要件は不要とされています。
電子取引を行った場合の電子データの保存方法
あゆみ:要件を満たすには具体的にどのように保存すればいいの?
ケン:要件を満たすシステムを利用するか、利用しない場合には、事務処理規定を策定した上で、規則性をもって自社のサーバ等にデータを保存するか、どちらかの方法になります。
要件を満たすシステムを使用する場合には、そのシステムの通りに、タイムスタンプを付与してデータを保存すればいいこととなります。
システムを使用しない場合には、事務処理規定を備え付けた上で、次の2通りの保存の仕方が推奨されています。
①請求書データ(PDF)のファイル名について、規則性をもって内容を表示する。例えば、A商店(株)から2022年1月20日に受領した220,000円の請求書を保存する場合にはファイル名を「20220120_A商店(株)_220,000」とする。
フォルダは「取引先」ごと、もしくは「各月」ごとなど任意に設定する
②エクセルなどで索引簿を作成し、受領した請求書等のデータファイルに連番を付し管理する
あゆみ:要は、後から見て「いつ」、「どこから」、「いくらの」請求書等がわかればいいってことね。
ケン:その通りです。後から見るのは税務職員ですので、第三者が見てわかるようになっていればOKです。
保存場所はクラウドサービスを利用することも認められますが、1箇所にまとめて保存することが求められています。
消費税法上の取り扱い
あゆみ:この取り扱いは、所得税と法人税を申告する事業者は全て適用されるのでしょ?消費税法上の取り扱いはどうなっているの?
ケン:消費税法上は、電子取引を行ってもそのデータを印刷しその書面で保存する方法も認められます。これは、令和5年10月1日以降適用されるインボイス制度においても同様です。
あゆみ:という事は、データと書面と2通りで保存しなきゃいけないってこと?
ケン:いえ、電子取引を行った場合には、請求書等の交付を受けなかったことにつき、やむを得ない事情があると考えられるので、帳簿に次の事項を付け加えた上で電子データにより保存することができます。
①電子取引による課税仕入れであること
②課税仕入れの相手方の住所または所在地
書面で保存すると青色申告取り消し?
あゆみ:もし、データを改ざんとか不正したらどうなるの?
ケン:重加算税が10%加重されます。
あゆみ:電子データではなく、書面で保存していたら何か罰則あるの?
ケン:青色申告の承認が取り消される可能性があります。所得税法もしくは法人税法上、電子取引については、電子データによる保存とされますので、書面での保存はその保存要件に従っていないことから青色申告の承認の取り消し対象となり得ます。
あゆみ:わかったわ。ちゃんとしなきゃいけないってことよね。
ケン:はい、そのようにお願いいたします。